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 竹下さんが車で迎えに来てくれたあの夜は、結局眠れなかった。
 竹下さんが眠ったベッドに、すぐにでも飛び込んで枕に被せたタオルに顔を埋めて、心行くまで匂いを嗅ぎたいと思う自分と、そんな考えに引いている自分がいた。何より、あのとても綺麗な竹下さんを、俺の汚い欲で汚してしまうようなことはしたくなかった。
 自分が間違いを犯す前に、夜中だろうがそんなことは気にもしないで、シーツもタオルも洗濯機に放り込んで洗った。

 洗濯機が回っている間、惜しいことをしたんじゃないかって何度も思った。他のことを考えて気を紛らせようと、霧島さんに渡されたゴムを取り出してルーズリーフに包んでみても、それは全くの逆効果で。
 竹下さんは、どんな風に女性を抱くのかと、また違う考えで竹下さんを汚してしまう。

 次の日、学食にいた竹下さんはやっぱり綺麗で、なぜだか、すごく安心したんだ。


「ユキちゃん、次なに飲むー?」

「え、ああ。ビールでいいっす、俺は」

「じゃあ注いであげるー!」

「ありがとうございます。すいませんっす」

「やだー! 超かわいいんだけど、ユキちゃん。もう持って帰りたーい」


 あれからしばらく、竹下さんと会うことはなかった。電話番号を知ったとはいえ、俺から連絡する用事なんてないし、竹下さんが気まぐれに誘ってくれることもなかった。
 霧島さんに誘われるがままに合コンに参加しても、俺の願いは届かず、竹下さんは来ない。飲んだり食べたり、マイペースにしている竹下さんをこっそり見ることが、合コンでの楽しみだったのに。


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