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「じゃあ、すいません。俺はこれで」
「おう、またなー」
友人からの電話で昼メシもそこそこに学食から出て行く雪田を見送る。呼び出され率ハンパねえな。まあ、そういうのも雪田の人徳なんだろうか。誰からも好かれるいい奴。そんな感じ。
「なんかさー、ユキって、思ってたよりヘビーなんだな」
「ヘビーって?」
「あいつぜってえ片想いで満足なんかしてねんだよ。その子に彼氏とかが出来ないことを俺は願うね。なんかまじこえぇわ。ユキが何かすんじゃねえかって心配になる」
「雪田が?」
「キレて暴れたり、相手に迷惑かける系ならまだいいんだけどな。止めてやれるし。けどなんか、ユキの場合、知らねえ内に消えていなくなりそうじゃん。そういうのが恐い」
じゅんぺーは何も考えてなさそうに見えて、他人のことをよく見ている。確かに、じゅんぺーの言う『消えていなくなろうとする雪田』は『キレて暴れる雪田』より想像が出来るような気がした。
そうなる前に、俺がそばに付いてて、どこにも行かないように見ていたい。暴言でも愚痴でも弱音でも、何でも聞いてあげる。泣くならずっと抱き締めててあげる。
雪田を好きにならないなんてバカだね。見る目ないクソ女。いらないなら俺にちょうだいよ。雪田の気持ちを俺にちょうだい。
そこまで考えて、あれ? ってなった。
「じゅんぺー。俺、ほんとに頭おかしくなったかも」
「……は?」
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