5-3




「えーっと、出会いっすか。あー、出会いっつーか、一番最初にその人を見かけたのは中3の冬で……」

「中3!?」


 じゅんぺーのようにでかい声は出さなかったが、思わず雪田の顔を見てしまった。まさか中学生の頃から好きなのか? そんな俺とじゅんぺーの驚愕リアクションを丸々スルーして、雪田は話を続行する。


「俺はそん時受験生だったんで電車で勉強してたんすけど、近くにいた高校生がうるさかったんすよ。で、うっせーなーって思ってたら、その人がうるさいって、疲れてる人とか勉強してる子もいるんだから静かにしろって言ってくれたのが、最初っすね。俺が一方的に意識しただけなんで、出会いとは言えないっすけど」

「ふーん、いい子じゃん。で?」

「で、その人が着てた制服見たら、俺が受けるつもりでいた高校ので、俄然やる気が出たんで無事入学できたっす」

「はい、おめでとう。高校ではどうだったわけ?」

「何も無いっす。見てただけなんで」

「その『見るだけ』ってのをよく言うけどな、それはまじで『見るだけ』なのか? 話し掛けたりとか、メールしたりとかは?」

「無いっすね。まじで『見るだけ』っす」


 何も言えなくなるじゅんぺー。
 俺も言葉が見つからない。


「だから言ったじゃないすか。ストーカーみたいなもんすよって」

「俺まじで理解できねーんだけど、お前それでいいの? 大学まで追っかけて来たのに、見てるだけでいいのか?」

「はい。いいっす。気持ちを伝えて距離を置かれるよりも、最初から遠くにいる方がいいんすよ」

「何で距離置かれる前提なんだよ?」

「好意を向けられると煩わしいって感じてると思うんすよね。その人の恋人に俺はなれないっすけど、それは俺だけじゃなくて、誰もなれないんす。だから、いいんすよ。誰のものにもならないんだったらそれで、いいっす」


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