5-2




「でもさ、雪田って眼中に無いんじゃなかった?」

「バカお前、あのイケメン君に長年想われてほんとに何とも思わない女の子がいると思ってんのか? 謙遜だよ、謙遜。ぜってぇ脈あり」


 何でそんな自信満々なんだよ、お前は。雪田が戻って来る前に、電話の相手がその女じゃないって方向に話を持って行きたいのに。


「全くアピってないって話だったじゃん」

「んー……そういえばそうか。あれ?」

「昨日は違う奴から呼び出されただけかもじゃね?」


 と言った所で、ちょうど良く雪田が戻って来た。


「ユキー、もしかして昨日の電話って女の子じゃなかった系?」

「あ、はい。違うっす」

「なんっだそれ! 期待して損した!」

「なんで霧島さんにいただいたコレは、お返しするっす」


 折り畳まれたルーズリーフ。おそらくあの中にはゴムが入っているのだろう。そのままでは渡せないからと、わざわざ家でルーズリーフに包んで来たんだろうか。


「持っとけよ。んで使え。そういうのは男が用意すんのがエチケットだからな」

「そういう場面には縁遠いので、受け取って下さい」

「……ユキよ、俺はお前が不憫になってきたぞ。お前はそれで本当にいいのか! 18だぞ! じゅーはっさい! もっとガッつけよ、バカ!」

「えぇー……」


 雪田の顔に『困惑』の2文字が浮かぶ。面白そうなので黙って話を聞くスタンスを取った。


「お前の恋を応援してやろう。この俺がその片想いを成就させてやる」

「いや、いいっすから。まじで」

「遠慮すんなって。じゃあまずは聞き取り調査からだな。よし、出会いから聞こうか」


 違う意味で雪田が不憫に思えてきたが、その話には興味があった。助けてあげたい気持ちもあるけれど、ここはやっぱり黙って話を聞くことにする。


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