35-4




「……いいんだよね? 俺といる未来を、れお自身が選んでくれたんだと思っても。れおは、後悔しないよね?」

「しません。けどまじで混乱してるんすけど……俺、なんで竹下さんに抱きしめて貰えてんだろ」

「言ったじゃん。れおが好きだよって。ずっとれおに触りたかった。こんな風に抱きしめたかった。好きだって言いたかった。だけど、俺は男だし、れおみたいないい子には釣り合わないと思って言えなかった」

「俺のが竹下さんに釣り合わないっすよ!」

「なんで。俺なんか何もいいとこないよ。れおは、優しくて、素直ないい子で、そばにいるとホッとする。すげー愛しいって思う」

「やばいっす……心臓痛いっす」

「俺も。あり得ないくらいドキドキしてる」


 これまで何度も何度も、自分が雪田に恋というものをしていると実感してきたけれど、今ほどそれを思い知らされたことはない。
 抱きしめているだけで、こんなに満たされた気持ちになるなんて。こんなに離れるのが惜しいと思うなんて。しかもこっそり匂いとか嗅いじゃってるし、俺。
 あー、やばい。もっと力込めても大丈夫かな? 苦しいかな? それでも、このまま溶け込んでしまうくらいくっ付いてたい。


「……竹下さん」

「あ、ごめん。痛かった?」

「えっ、全然! 痛くなんかないっす。そうじゃなくて……これ、夢じゃないっすよね?」

「現実だよ」

「ドッキリとか……」

「そんなことしないよ。そんなこと絶対しない」


 雪田と目が合う。まだ潤んだままの瞳はしっかりと俺を見つめてくれている。これからはずっと雪田とこんな風に過ごせると思うと、俺まで泣きそうになる。雪田に好きだよって言っていいんだ。雪田に触れてもいいんだ。雪田は、俺を受け入れてくれるんだ。

 やばい。幸せってたぶんこういうことだ。
 好きな子が、俺の腕の中にいる。それでもう全部、満たされてる。


「俺、ずっと言いたくて、言えなかったんすけど……」

「うん」

「竹下さん。俺、……竹下さんが好きっす」

「うん……やっと言ってくれた」


 少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らしたあと、また俺の目を見て、雪田が笑った。

 俺の大好きな、ヘニャっとした笑顔で。


end.


- 140 -



[*前] | 次#
[戻る]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -