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「……いいんだよね? 俺といる未来を、れお自身が選んでくれたんだと思っても。れおは、後悔しないよね?」
「しません。けどまじで混乱してるんすけど……俺、なんで竹下さんに抱きしめて貰えてんだろ」
「言ったじゃん。れおが好きだよって。ずっとれおに触りたかった。こんな風に抱きしめたかった。好きだって言いたかった。だけど、俺は男だし、れおみたいないい子には釣り合わないと思って言えなかった」
「俺のが竹下さんに釣り合わないっすよ!」
「なんで。俺なんか何もいいとこないよ。れおは、優しくて、素直ないい子で、そばにいるとホッとする。すげー愛しいって思う」
「やばいっす……心臓痛いっす」
「俺も。あり得ないくらいドキドキしてる」
これまで何度も何度も、自分が雪田に恋というものをしていると実感してきたけれど、今ほどそれを思い知らされたことはない。
抱きしめているだけで、こんなに満たされた気持ちになるなんて。こんなに離れるのが惜しいと思うなんて。しかもこっそり匂いとか嗅いじゃってるし、俺。
あー、やばい。もっと力込めても大丈夫かな? 苦しいかな? それでも、このまま溶け込んでしまうくらいくっ付いてたい。
「……竹下さん」
「あ、ごめん。痛かった?」
「えっ、全然! 痛くなんかないっす。そうじゃなくて……これ、夢じゃないっすよね?」
「現実だよ」
「ドッキリとか……」
「そんなことしないよ。そんなこと絶対しない」
雪田と目が合う。まだ潤んだままの瞳はしっかりと俺を見つめてくれている。これからはずっと雪田とこんな風に過ごせると思うと、俺まで泣きそうになる。雪田に好きだよって言っていいんだ。雪田に触れてもいいんだ。雪田は、俺を受け入れてくれるんだ。
やばい。幸せってたぶんこういうことだ。
好きな子が、俺の腕の中にいる。それでもう全部、満たされてる。
「俺、ずっと言いたくて、言えなかったんすけど……」
「うん」
「竹下さん。俺、……竹下さんが好きっす」
「うん……やっと言ってくれた」
少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らしたあと、また俺の目を見て、雪田が笑った。
俺の大好きな、ヘニャっとした笑顔で。
end.
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