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「ユキ。頑張れ」
「三木さん……」
「そだな。頑張れユキ!」
「……小野さんも、三木さんに告白する時恐かったっすか?」
「いや俺は告白された方なんじゃねーかな、な?」
「は? 小野さんでしょ。俺じゃないですよ。調子に乗らないで下さい。うざいです」
「いや三木だって絶対。だってあん時……」
「余計なこと言わないで下さい。ていうか思い出さないで下さい。まじでうざいです。消えて下さい」
何で喧嘩になってんの? 俺のせい? これって。
「あ、ユキ気にしなくていーから、もう帰れ。竹下待ってんぞ」
「え、でも」
「三木のこれは照れてるだけだから。気にすんな」
「何ふざけたこと言ってんですか。ほんとそのにやけた顔ぶん殴ってやりたいです」
どうやら痴話喧嘩だったらしい。
それにしても……三木さん。すげーな。あれが照れ隠しって。それを受け入れてる小野さんもすげーけど。
先輩達のおかげで少しだけナーバスな気持ちが抜けた。好きだと言う言わないは置いておいて、とにかく帰らなきゃ。俺は割としっかりとした足取りで三木さんの家を出た。
駅前のロータリーに停車している竹下さんの車を見つけた。
助手席側の窓から中を覗き込むと、竹下さんが内からドアを開けてくれた。
「ごめんね、急かすようなことして」
「いえ」
何度乗っても緊張する竹下さんの車に乗り込む。今日は一段と落ち着かない。これから何を言われるんだろう。それが不安で仕方がない。
不安で押しつぶされそうなのに、スーツ姿の竹下さんがかっこいいとかそういうことだけはバッチリ考えちゃう自分が嫌だ。
「……なんか目赤くない?」
「え! そうっすかね、さっきあくびしたからかな」
「何でもないなら、いいんだけど」
「何もないっすよ。気にしないで下さい」
竹下さんが、俺のちょっとした変化に気付いてくれた。それに俺はまた泣きそうになって俯いた。
俺があまり触れられたくないことを察してくれたのか、竹下さんはそれ以上何も言わずにシートベルトを締めた。それでこの話は終わり。竹下さんが話したいと言っていたことを話すんだという合図のように感じた。
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