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「出てもいいすか」
「当たり前だろ。早く出てやれよ」
小野さんに許しをもらい、俺は電話に出た。手が少し震えてる。
「はい、雪田っす」
「れお、今どこいんの?」
「えっと、三木さん家っす」
「れおにどうしても今すぐ話したいことがあるんだけど、今から会えない?」
「え、今からって……竹下さん、今は成人式で帰省されてるんじゃ?」
「うん。そうだったんだけど、もう戻ってきてて。それで今、れおのマンションの前にいるんだ。今どんな状況? 帰って来られない?」
俺のマンションの前……? わざわざ俺と話すために? 地元から早く戻って来たってこと? こんな時間に?
話したいことって何だろう? 何か悪いことだろうか? 今からそれを聞きに行くのか?
「おい、ユキ。どうしたんだよ? 竹下何だって?」
「……あ、えっと」
「今の声、小野さん?」
「あ、はい。そうっす」
「そっか、ごめん。遊んでんだもんね。今日はやめとく。なんか勢いで家の前なんかで待っちゃって、電話なんかして、ごめんね」
「え、いや。あの……」
「でもできれば、今日会って話したくてさ」
「はい……今から帰ります。少し待ってて下さい」
「ごめん、ありがとう。俺、車で来てるから三木さんの家の最寄りまで行くよ。駅前で拾うね」
「分かりました。それじゃ、あとで」
電話を切って、頭を抱えた。何を言われるのか恐くて仕方ない。行きたくない。聞きたくない。嫌だ。こわい。
「竹下と今から会うのか?」
「……はい」
「何でそんな嫌そうなんだよ?」
「今すぐ話したいことがあるって……絶対に悪いことっす。地元帰って、何か知っちゃったんすよきっと。俺のこと知ってる人がいたのかも。どうしよう」
「どうしようってお前。こうなったら言うしかねーだろ。ちゃんと、お前の口からお前の気持ちを言ってやれよ」
そんなこと言われても。俺がキスを拒まなかったことが原因で、ずっと竹下さんに避けられてた。そんな状況で、好きだなんてとても言えない。
「俺……竹下さんにこれ以上嫌われたくないっす……」
あ……やばい。涙出てきた。止められない。先輩達の前なのに。
「ユキが好きだって伝えたら、竹下はユキを気持ち悪がって嫌うような奴か? あいつはユキをそんなことで嫌うような奴じゃねーだろうが。告白しろとはもう言わねーけど、嘘だけは吐くなよ。今から竹下とどんな話になっても、ちゃんと正直に応えてやれ」
三木さんの言葉が腑に落ちることはない。だって、現に俺は竹下さんに避けられてた。好きだなんて言ったら、あの時以上に引かれて、完全に嫌われて、終わりだ。
だから、俺は……。
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