33-4




 何かを得るために、どうすればいいか。考えて実行して手に入れる。もしもそれが手に入らないと気付いたら、諦める。欲しいと思う気持ちを捨てる。簡単なことだ。じゃあ、いらない。それだけ。
 友人関係なんてもっと希薄だ。いつの間にかそばにいたから一緒にいた。いなくなったならそれで終わり。
 女との関係もそう。その日泊まらせてくれるなら誰でもよかった。年の離れた女は俺を縛ろうとはしなかったし、少しでもそういう気配があれば切った。同年代の女は面倒なことになりそうだから初めから排除。大学入ってからは一晩だけの遊び。やることだけやったらそれで終わり。物にも他人にもすぐに飽きて、興味が無くなった。ずっと持ち続けてるのは、家に帰りたくない、という後ろ向きな思いだけ。

 そんなだったのに、雪田に対してだけは違った。
 雪田は出会った時から他の誰かに恋をしていた。それもどっぷり。しかも雪田は男だ。男同士でなんて考えたことすらなかった。最初から手に入らないって分かりきってるのに、それでも惹かれて仕方ない、焦がれるような好きって気持ちを初めて知った。寝ても覚めても興味が薄れるなんてことはない。雪田に会うたび、顔を見るたび、声を聞くたび、中身を知るたび、まじで恐いくらいに気持ちが膨らんでいく。


「ノロケるねー。いつから付き合ってんの?」

「俺の片想いだよ」

「まじで!? お前に落ちない女ってどんなんだよ!」

「いるだろ、普通に」

「何言ってんだ、告ったら一発だろ」

「そんな訳ない。って思ってたんだけど……うん、もしかしたら、もしかするかも。でもあんま期待させないで。こんなの奇跡だよ」


 俺の学年で、あの大学に行った人間が、俺以外にもいるのかもしれない。俺が知らないだけで。もしくは俺の学年じゃないのかも。どうだっけ? 学年の話してたんだっけ? 覚えてないっていうか、思い出せない。期待が膨らんで、膨らみ過ぎて、思考能力が終わってる。


「……で? なんでこんな話になったんだっけ?」

「雪田が俺を知ってたかどうかって話から」

「あー、そうだったな。で、なんで雪田を気にしてんの?」

「大学のサークルの後輩なんだよ。同じ高校だったなんて言われなかったから、驚いた。だから雪田も俺を知らなかったのかなって思っただけ」


 もし、俺の願望通りだったなら……雪田が大学まで追いかけた好きな人っていうのが、俺だったら。

 ……どれだけ嬉しいだろう。
 想像しただけで飛び跳ねたくなってくる。俺が飛び跳ねている姿は想像したくないけれど。
 聞けば、教えてくれる? 俺が雪田を好きだと伝えることは許される? 雪田は、俺の恋人になってくれる?


「ごめん、俺帰るわ」

「は? もう?」

「うん。なんかもう居ても立っても居られないからさ。誘ってくれたのにごめん。じゃあ」


 挨拶もそこそこに、俺は店を出て、自分の車に乗った。ホテルに戻って荷物持ったら、すぐ帰ろう。高速に乗れば2時間ちょっとで帰れるだろうし、それならまだ、雪田の家に行っても大丈夫かな。
 あー、早く会いたい。会って確かめたい。早く、早く早く。


- 132 -



[*前] | [次#]
[戻る]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -