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 夕方から中学の同窓会があると誘われて、俺は行くことにした。これはまじで俺の悪いところ。行かないって言って、何でだって聞かれて、理由を言って、納得してもらうまでのその流れがもう面倒臭い。じゃあもう行って適当に合わせとけばいいやって思ってしまう。
 正直言って当時の担任には会いたくないから、早く帰ることにはなりそうだけれど。行ってしまえば途中で抜けるのは簡単だと思う。


「大学入ってから全然こっち帰って来ねーんだもん。すげー今さらになっちゃったけど、これ卒業式ん時の写真な。竹下が写ってるやつ焼き増しといたから」

「まじで? サンキュ」


 卒業してから2年近く経つのに、今日俺に会うからとわざわざ用意して来てくれたことに少し驚く。まあでも、写真なんて貰ってもそのまま引き出しの奥にしまってしまうのだろうけれど。
 せっかくだから、袋から出して見てみる。少し幼さを感じさせる自分達の笑顔が写っていた。


「うわ、懐かしいなー。こうやって見比べるとお前大学行って垢抜けたね」

「うっせーよ。竹下だってパーマとかしてんじゃん」


 一枚一枚、丁寧に見ていった訳ではない。しかし、よく知った顔がチラッと目に入って、俺はそこで手を止めた。


「……え?」

「え? なんかあった? まさか心霊写真とか?」

「これ! これ誰か分かる?」


 ありえない。まさか。何で。どうして。こんなのに写ってんの。


「は? こんなん一個下のやつじゃん。えーっと、名前なんだっけな。ほらほら……あー、出かかってんだけどな。お前みてぇに女子からモテモテでさ、何回か聞いたことあんだけど……」

「雪田?」

「そうそれ! 雪田だ! 何だよ、お前知ってんじゃん」


 他人の空似なんかじゃなくて、正真正銘、雪田なんだ。
 同じ高校だったの、何で言ってくんなかったの? そう思った瞬間、ほとんど願望みたいな、自分本位な考えが思い浮かんだ。

『それも高校からずーっと片想いなんだと! 大学まで追いかけて来たっつーんだからまじじゃん』

『俺、竹下さんが大好きなんです。だから、嫌いにならないで下さい』

『竹下さんに想われてる人が羨ましいっす。俺が欲しかったっす……その気持ち』

『俺……、竹下さんになら、何されてもいいっす』

 まさか。まさかまさか。雪田が大学まで追っかけてきたのって……。


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