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じゅんぺー達が出て行ってしまって、二人きりになったのが不安なのか、俺の様子を探るようにチラリとこっちを見た雪田に笑顔を見せる。一瞬でホッとした表情になったことに背中を押されて俺は口を開いた。
「さっきは、ごめんね。ていうか、ここ最近ずっと、ごめん」
泣きそうな顔をして、今にも『俺が悪いんです』と言いそうな雪田を制して、言葉を続けた。
「俺ん家でDVD見た時、俺になら何されてもいいって言ったよね」
「……言った、っす」
「それで思ったんだ。れおの言葉に甘えて、どんどん図々しい奴になって、無茶なことばっか言っても、きっとれおは嫌がったりしないんだろうなって。我慢して、俺のこと許しちゃうんだろうなって思ったらさ、怖くなったんだ。れおのそばにいること……っつーか、れおに嫌われちゃうのが怖いんだ」
「そんなこと、あるわけないっすよ」
「あるよ。れおは知らないんだよ。俺がどんだけ嫌な奴か」
「そんな……」
「だってさ、現にれおのこと傷付けたでしょ。俺、れおのこと避けてた。さっきも酷いこと言った。あんな風にしか言えないなんてさ、自分でも嫌になるよ」
雪田のそばにいたい。でも嫌われたくない。そうなるくらいなら距離を置いてた方がいいと思ってたけど、それでどうでもいい存在にもなりたくない。
「嫌だって言って。何されてもいいとか言わないで、やめてって、したくないって言ってよ。じゃないと、分からないから。俺ほんとにそういうの鈍いんだよ」
雪田が困った顔をしてる。正直に自分の気持ちを話したけど、これじゃダメだったのかな。やっぱり、俺ってそばにいるべきじゃない?
「……俺、あの……」
「うん?」
「嫌なこと、あるっす……」
言ってって自分で言ったくせに、いざ言われるとなるとビビってる。どうしようもないな、俺って。
「なに?」
「竹下さんに避けられるの……嫌、っす」
拍子抜け、ってこういうことかな。もっとなんか、違うこと言われるんだと思ってた。
「うん。ごめんね。もう何も言わないで避けたりしない」
「竹下さん、俺のこと嫌いになったんじゃ、ないっすよね……?」
「違うよ。ほんとに、そうじゃないんだ。ごめんね。優しくしてあげられなくて、ごめん。……よく分かんないんだ。今まで誰かと仲良くしたいって思ったことが無かったから、人付き合いも上手くないし、れおの気持ちもちゃんと察してあげられないんだ。自分の気持ちを言うのも下手で……だからさ、れおが言って。我慢しないで、俺にでも分かるように」
あー、めちゃくちゃかっこ悪い。格好は付かないけど、でもさ、言ってよかったんだよね? 雪田がやっと笑ってくれたから、これでよかったんだって思いたい。
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