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「顔だけとか言ってごめんなさいね」


 言われてないことで謝られた。たぶん俺のいないところで言ってたんだろうけど、それなら謝らなくていいのに。つーか本当のことだし、否定できない。


「ユキちゃん、あなたのことすごく好きなのよ。あなたのことを話している様子で伝わってくるの。僕や淳平くんがあなたのことを悪く言ったりすると不服そうな顔したりね。あんないい子が好いてくれてるんだから、ちゃんと大事にしてあげなさいよ」

「雪田の好きと、俺の好きは違いますよ。だから、すれ違うんですかね」

「何言ってんのよ。男同士だからとかつまんないことで悩んでんじゃないでしょうね? 性別なんてクソ食らえ。些細なことよ。関係ないわ。好きなら相手にぶつかっていけばいいの。元々好意を持ってくれてるんだから、自信持っていきなさい。その整った顔だって、とんでもないアドバンテージじゃないの。ちゃんと分かってる? 多少強引なことだって、その顔なら許されちゃうわよ。グダグダ悩まないで、したいようにしちゃいなさいな。ユキちゃんだってきっと、その方が嬉しいはずよ?」


 鏡越しにしっかりと合わさった視線から、力を注入されているような気になる。俺ってこんなに影響されやすい性質じゃないはずなんだけどな。この人に言われると、そうなのかなって思えてきてしまって困る。


「雪田が戻ってきたら、二人きりにしてもらってもいいですか?」

「まっかせなさい。頑張るのよ!」


 バシッと叩かれた肩が痛い。こんなにぞんざいな扱いを受けたのも初めてだ。でもなんだろうな。割と許せてしまう自分が不思議だ。


「あっ、淳平くん? 準備完了よー。早く戻ってきて、約束のデートに行くわよー!」


 ものの数分もしないうちに雪田とじゅんぺーが戻ってきた。雪田の表情は固いまま。じゅんぺー達が二人で出て行くと察して、さらに不安そうな顔になる雪田を見ていると、自分が原因のくせに守ってあげたくなる。
 我ながら意味不明だ。


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