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「えーっと、例えば……笑顔が見れたら嬉しいっすね。まあ、どんな表情でも顔が見れたら嬉しいっす。あとは、なんかこう、ふとした瞬間に綺麗だなって思ったり、何気無い仕草にグッときちゃったり……俺の名前を呼んでくれた時には、やっぱ、他の人に呼ばれるのとは違う感覚に陥るというか。まあ、そんな感じっす」
というのが『好き』という感じらしい。
……ないなっていうのが俺の正直な感想。そんな風に女に対して感じたことは一度もない。
ただ、笑顔を見ると気分が良いのは、雪田に当てはまるかな、と思った。
「超純愛じゃん。なんだそれ。これが同年代の男の脳内で繰り広げられてんのか。信じらんねえ!」
じゅんぺーが驚愕している。さすがは合コンで知り合った女とホテル行ってヤるだけで恋愛した気になる男。まあ、雪田からしてみれば俺やじゅんぺーの脳内の方が信じられないだろう。
「え、なんすか。いいじゃないすか、純愛」
「雪田はさ、そんな好きなら付き合いたいとは思わないの? ヤりたいとかって考えない?」
「だからそれ俺も何回も言ってんだって。絶対そう思うじゃん」
「確かに霧島さんにもよくそう言われるんですけど、俺、その人の隣にいる自分が想像できないんすよね。釣り合わないっつーか。大体、俺なんか……」
「眼中に無い、だろ。聞き飽きたわ! とゆーわけでユキは今日の合コン強制参加! はい決まり!」
雪田が眉を下げて、仕方が無いというような表情をしている。じゅんぺーが決めたら譲らないタイプだと知っているからか、これ以上抵抗する気はないらしい。
雪田の好きな女が、雪田を好きになる可能性が無いのなら、合コンでも何でも行って違う女と出会うのも悪くは無いと思う。それに、望みが無いと分かっていても好きなら、そのままでも幸せだって言うなら、それもいいと思う。
なのに、なんか引っかかるような、このモヤモヤした気持ちは何なのだろうか。
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