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「そろそろ飯時だね。ケーキもあるし、デリバリーにしよっか」

「俺は、何でも!」

「じゃあ、ピザね。パーティーっぽいでしょ。なんて、昨日ちょうどポストにチラシ入ってたから思い付いただけなんだけど」


 ピザを選んで、電話をした。DVDの最後の一本は、食べ終わってから見ることにした。それまでの時間、何を話そうかと俺は考えを巡らしたけれど、宅配の電話を済ませるとすぐに竹下さんが話題を提供してくれた。


「来月は学祭だね」

「そうなんすか?」

「一回生三人の誰かがコンテスト出ることになるよ」

「コンテスト?」

「ミスコンみたいなやつ。女と男とカップルの三部門。盛り上がらせるために各サークルから出ないといけない決まりなんだってさ。しかもどの部門に出るかはくじで決めるらしいから、うちみたいな男しかいないサークルだと最悪、女の格好させられるんだって」

「女装、ってことすか?」

「そう。実際に一昨年、三木さんが女装したらしいよ。去年は普通にじゅんぺーが男として出たらしいんだけど。小野さんの時も男だったって」

「三木さんの女装……」

「代々写真残してるらしいから、今度じゅんぺーに聞いてみなよ」


 そんな話をしていたら、ピザが届いた。竹下さんと二人で、竹下さんの部屋で食事。粗相をしないか緊張して、味なんか少しも分かんないし、すぐに胸がいっぱいになって、全然食べられなかった。


「目、閉じてて」


 ケーキを出す時に竹下さんがそう言った。俺は素直に目を閉じて待つ。ああ、こんなことが前にもあった。竹下さんがコンタクトを外して眼鏡をかけてくれた時。あれは、俺が勝手に目を塞いでいただけで、閉じていてと言われたわけじゃないけれど。
 パチ、と音がしてふっと暗くなったのを感じた。ライターの火を付ける音がする。そっか、バースデー用だからローソクが付いてるんだ。


「はい。いいよ」


 目を開けた。暗い部屋の中で、1と9の形になったローソクがボンヤリと光ってる。付いてたんじゃない。竹下さんが、わざわざ、俺のために、選んでくれたんだ。そう思ったら、余計にローソクの火がボンヤリして、視界が滲んだ。


「何ボーッと見てるの。火、吹き消さないの?」

「あっ、先に写真撮らせて下さい! 記念に!」


 慌ててケーキに携帯を向ける。その携帯をヒョイっと俺の手から取って、竹下さんは笑った。


「記念なら、二人で撮ろう。れおはケーキ持って」


 言われるままにケーキをそっと両手で持つ。竹下さんの右手にある俺の携帯の液晶には、並んでいる俺と竹下さんが映ってる。この幸せ者、もっとちゃんと笑えよ。変な顔をする自分に苦笑する。


「撮るよー」


 カシャ、という音がして、バカみたいに情けないヘタレた顔した俺と、いつも通りの優しい笑顔の竹下さんが、そこにいた。


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