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「え、俺まだ行くとは言ってないすよ」

「だーかーらー! 片想いなんかやめて次行けっての。お前イケてんだからホイホイ寄ってくんだろーが」

「なに、雪田って好きな女いんの?」

「そーなんだよ。それも高校からずーっと片想いなんだと! 大学まで追いかけて来たっつーんだからまじじゃん。だからアタックしろっつってんのに『俺なんか眼中に無いすから』とか言ってなんもしねーの」


 なんで霧島さんは勝手に俺の恋愛事情を人に話しちゃうんだろう。おかげでサークル内で知らない人いないんじゃないかって勢いだ。……俺まだ入学して3ヶ月しか経ってねえのに。


「好きな女追いかけてここに入ったの? めっちゃ好きじゃん。普通にすげー」

「いや、もう半分ストーカーみたいなもんっす。眺めてると幸せなんすよ」

「進路まで左右されてんのに見てるだけ? それが好きってこと? えー、俺には全く分かんないな」


 心底分からないという表情をする竹下さん。


「言ってやれ、もっと言ってやれ。思春期真っ只中で好きな子見てるだけって、お前の息子はどうなってんだっての!」

「こんなとこで話すことじゃないでしょ! まじやめて下さい!」


 大体、霧島さんは声がでか過ぎなんだよ。竹下さんがいるから関心集めちゃってんのに、まじで勘弁。


「じゃあさ、好きってどんな感じ?」

「……竹下さん。その話もあんまりしたくないっす」

「ちょっとだけ。参考までに。だめ?」

「いや、だめじゃないすけど……なに話せばいいすか?」


 やっぱりこの人は天然だ。
 自分の『だめ?』にどれほどの攻撃力が備わっているか全く分かってない。なんかもう何でもいいわって気にさせられる。MPとかあればいいのに。そういう破壊魔法は回数に制限をかけるべきだろ。


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