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「れお。お待たせ」
「あ、竹下さん! 選んでみたんすけど、どうっすか?」
カゴに入った飲み物やお菓子を見る。驚くくらいに俺の好みのものばかりが入っている。果汁飲料も、炭酸飲料も、お茶もスナック菓子もつまみも。全部。俺自身が選びそうなラインナップだ。
「完璧すぎるでしょ」
「よかった」
「れおは俺のことすげー知ってんだね」
「え、あ、えっと……」
なぜかは分からないけど、ものすごく気まずそうな顔をしている雪田。そんな顔させるようなこと、俺言ってないのに。
「俺にもれおのこと教えてよ。れおの好きなジュースってどれ?」
「あ、俺は、これっす」
「カルピス俺も好きだよ。炭酸は好き?」
「はい。好きっす。割と何でも」
菓子類も雪田が好きだって言うものを次々とカゴに入れていった。それを忘れないように一つ一つ意識した。雪田のことを、また少し知ることができて嬉しい。
「あ、いいよ。俺が払うから」
レジで店員がバーコードを通す間に、雪田が財布を取り出そうとするのが目に入った。
「えっ、いやそんなわけにいかないっすよ! さっきDVDもケーキも竹下さんが払ってくれたんで、これは俺がって思ってたっすから」
「だーめ。今日はれおの誕生日祝いなんだから。俺が全部出すよ」
「……あ、じゃあ! 竹下さんの誕生日には俺が! その時はちゃんと計画も立てておくっすから!」
「うん。楽しみにしてる」
雪田が俺のために、俺の誕生日を祝うために、計画を立ててくれる。そう思うと、次の誕生日が待ち遠しくて仕方がなくなった。
日が日なだけに、今まで自分の誕生日として特別なことをしてこなかった。だけど、それを逆によかったって思う。『クリスマスイヴ』じゃない。『俺の誕生日』を一緒に過ごしてくれる初めての相手が、初めて好きになった子。そんなことを喜べる自分になれたことが、おかしかった。
そんな人間に変えてくれた雪田を、もっと好きになった。
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