2-3




「雪田もいたんだ。ちょうど良かった」


 竹下さんの口から出た最初の言葉が自分の名前だったことに、嬉しくなる。


「ありがとね、今日。鍵返しとく」

「あ、はい。ありがとうございます。つか竹下さん、今日授業あんなら言ってくれれば俺起こしたっすよ」

「あー、でも来る気あんまなかったし」

「え、ちょ、待った待った! なんだその恋人みてえな会話は! なんだその鍵は!」


 『恋人みてえな会話』という霧島さんの言葉にまた嬉しくなる。ニヤけそうになる表情筋を必死に抑える。


「雪田ん家の鍵。あ、そうだ。置いてあったメシも食わせてもらったし、お礼に今度なんか奢る」

「え、いいっすよ。そんなことでお礼なんて逆に申し訳ないっす」


 あ。……しくじった。たった300円程度のことだろうが、『お礼に』って言ってくれてんだから、ガッついときゃよかった。竹下さんとメシなんかこの機を逃すと、もう一生無いかもしれないのに。


「俺がそうしたいから。雪田が嫌じゃないなら、メシ付き合ってよ」

「あ、はい! 是非!」


 やった……っ! 竹下さんとメシ……!
 いや、待て待て。社交辞令かもしれないんだから、あんまり期待するなよ、俺。そもそも、お互いの携帯番号すら知らねえんだから、メシなんて夢のまた夢。叶ったとしても学食か、学内のカフェだ。


「メシって言えばさ、今日も合コンあんだわ。コウも来る? ユキは来るって」


- 7 -



[*前] | [次#]
[戻る]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -