家族やからな
「ヤナー? 閉店作業終わった……って、結城さん。ほんまに来はったんですね」
「お前が呼んだんやろ」
「へ? 店長が?」
「まー、うん。今日店閉めたあとヤナにコーヒーの淹れ方教えるってメールしてん」
で、わざわざ来たんか。どんだけ俺が初めて淹れたコーヒーにこだわっとんねん。こんなん、店長の淹れたコーヒーと違いすぎて、人に飲まれんのとかめっちゃ恥ずかしいのに。
「まぁ、コーヒー飲みに来たんもほんまやけど。あのこと、ちょっとは分かったか聞きたくてな」
カウンターに立った店長に、結城が真剣な顔で尋ねた。なんか席を外すべきか迷う。聞いたところで俺には分からんのやろうけど。
「昨日の今日なんで、はっきり言うて分かってないことの方が多いです。襲撃されたんはどうやら侠心会幹部の店やったみたいです。実際にやられたんはその幹部と下っ端のもん含めて4人。1人は軽傷。3人は重傷、内1人は意識不明です。相手も襲撃理由もまだ分かってません。ただ……よりにもよって侠心会なんでね……これは簡単には収まりが付かんでしょうね」
「侠心会か。じじいが黙ってへんやろうな。清次さんもストッパーにならへんやろうし、面倒なとこやってくれたもんやな。……やっぱり俺もあっち行った方がええな」
「じゃあ、結城組はどうするんです? もし……いや、無いとは思うんですけど、もしも野田組の中でも力のある侠心会のシマやと分かった上で襲撃したんやとしたら、うちも警戒せなあかんでしょう。関西やから言うて、楽観はできませんよ。万が一ってこともあるやないですか」
「せやけど、今はあっちが心配や。特にじじいが何しでかすか分からん。侠心会に手ぇ出すようなトチ狂った奴が、じじいを襲撃せえへんとは限らへんやろ。それこそシャレにならんし、ここに残った俺を俺が許せへん。……なんやかんや言うても、じじいと狼と清次さんは、家族やからな」
話に出て来る名前も何も知らん俺にはなんのこっちゃ分からん。とにかく分かることは、結城がまた関東に行くことと、それが危険やってことだけ。
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