俺を選べ




「何でそんなん聞いたん」

「あ? あー、まあなんや。……お前に好かれる努力でもしてやるかっちゅー気になってな。顔が好きや言うんやったら、俺としては御の字やったんやけどな。そう上手くはいかへんか」

「え、なに。俺に、好かれたい……ってこと?」

「ほんまは言いたくなかったんやけどな、正直に言う。お前の母親を見つけた。お前の母親は金持ちのお嬢様生まれで、今は金持ちの奥様や。身分違いのお前の父親と若い頃に駆け落ちしたけど失敗に終わった。母親はお前のことは死産やったと聞かされて、父親は手切れ金とお前を渡されて身を引いた。恐ろしいくらい昭和臭がするエピソードやけど、実話や」

「……え、ちょお待って。は?」

「ほんで今もお前が生きとるってことは知らんまま。不妊治療の成果も実らず、養子を検討中なんやと。お前が母親に会いに行ったら、お前は大金持ちのお坊っちゃま。ヤクザの世話にならんで済む訳や」

「は? そんなん言うて……結城は、俺に、どうさせたいん?」


 母親に会いに行って、金もろて来いってこと? いや、違う。違うはず。結城はそんなんちゃう。ちょお待ってって……訳わからん。母親が生きとって? 金持ち? 俺は手切れ金もろた親父と一緒に貧乏暮らししとった? 俺って何なん。いらん子やった? ちゃうって。親父はそんなんやなくてちゃんと……


「だから、俺はお前に好かれようとしとんやろが。話の流れで分かれや」

「え、や、待って。ほんま、待って。いや、ちゃう。全部言って。結城が考えとること、全部。言うて」

「お前はいい大学にも行っとるし、顔も写真で見たお前の母親にそっくりや。お前がその他大勢の養子候補に劣ることは無い。だから、お前には選択する自由がある。金持ちのお坊っちゃまになれる。それを選ぶなら、不利益にしかならん俺との繋がりは金で綺麗に断ち切ってやる。でも、迷うんやったら、遠慮はせえへん。まあちょっとは不自由な思いをさせることもあるやろうけど、大事にしたる。せやから、俺を選べ」


 自分を選べという野獣の眼に俺は射抜かれて、思考は完全に停止状態。でもこれだけは分かる。結城は、俺を求めてくれとる。だから、俺は結城を選ぶ。


- 80 -



[*前] | 次#
[戻る]


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -