ほんま……クソや




「……あー、何がしたいねん俺は。言っとることもやっとることもめちゃくちゃや」


 仰向けに寝て、天井を見つめながら、ポツポツと言葉を吐き出していく。


「最初は、見守っとくだけのつもりやった。楽しそうに働いとるあいつを店に行って眺めるだけで満足やった。……借金くらい、もっと違うやり方で解決してやれたのに。あいつを手に入れるチャンスやと思ったら、どうしようもなかった」


 自嘲するような笑みが結城の顔に浮かぶ。長い付き合いで初めて見る表情だった。


「母親が金持ちって、反則やろ。あいつにとって俺の価値は金でしかないのに。それすら奪われたら、俺なんぞただの害やんけ」


 自信過剰。自己中心的。得手勝手。我が儘。傍若無人。エゴイスト。
 結城を形容する言葉はこれらに類するものばかりだ。


「けど、手放したくない。優しくしてやりたい。好かれたいし、触れたい。でもあいつのことを思ったら、今すぐにでも追い出して、縁を切ってやるべきや。母親のことを教えてやって、よかったなって言うべきやろ。分かっとるのに……そうできへんとか、ほんま……クソや」


 結城のことはよく知っているつもりでいた。

 花月さんが現れてから、知らなかったことが次々と出てくる。
 こんな結城を私は知らない。結城が税金対策だと言って遊ばせている店で花月さんをずっと雇っていたことも、そもそもあの店に置いている男のこともほとんど知らない。

 知らない結城を見ることが、少し寂しいように感じるのは、どうしてだろう。


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