それが、全てや
「……花月」
「な、なに?」
何でそんな顔するん? 俺、なんか嫌なこと言うた? 何でそんな……辛そうな顔するん?
「俺がいらんことせんでも……お前の借金、何とかなっとったって言うたら、どうする?」
「何それ……? どういうこと?」
「ほんまやったら俺みたいなヤクザもんやなしに、堅気のまともな人間がお前を迎えに行っとったはずやってことや」
「……そんなことあるわけ、ないやろ」
第一、俺にはもう頼れる人なんかおらへんし。結城がおらんかったら、あん時の東堂組? かなんかにええように扱われてほかされるって言うたんは、お前やんけ。
「……お前に嫌われたままやったら、まだ良かったのにな」
「な、んやねん。それ、どういう意味や」
「さあ、どういう意味やろな?」
「おまっ、ふざけんなや!」
「お前の借金を肩代わりしたんが俺やない他の誰かやったとしても、お前はそうやって好意を向けるやろ」
「……それが、なに?」
「それが、全てや」
これで話は終いやとでもいうように結城は立ち上がって、俺が何か言おうと考えとる内に、どっかへ行ってしまった。
その晩、結城は帰って来んかった。
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