なんつって。俺も乙女か!
「結城? 何か言えよ。俺ばっか喋ってハズイやんけ」
「……他でバイトすんのは許さん。それやったらまだあの店の方がマシや」
相変わらず顔を隠したままの結城。どうやら店長が言った通り、他でバイト探すっていうのは効果があったらしい。
「つまり、雇ってくれるんやな?」
「今すぐは無理や。色々準備させるまで待て」
「準備? なんの?」
「お前は知らんでええ。とりあえず1週間はかかると思とけ。……あとシフトはこれまでみたいによーさん入れへんぞ」
「そっか。うん、分かった」
結城が言うなら必要な準備なんやろう。シフトも少なかったっていい。ちょっとずつでも貯金していければ。
それに、バイトばっかして、結城と過ごす時間が減っても嫌やし……なんつって。俺も乙女か!
「なあ、何でずっと顔隠しとるん?」
「お前に見られたくないから」
「見られたくないような顔ってどんなんやねん。お前なんかいっつも無駄にかっこええ顔やんけ」
「そういういらんこと言うな。アホ」
「人の顔はジロジロ見といて自分は隠すてセコイぞ」
俺がそう言うと、結城は顔を覆っとった手を顔から離した。それから合わせられた目に驚く。
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