結局何を言いたかったんやっけ?




「……俺、最初は嫌やったよ。親父が死んだのに、みんなして金、金、金。ほんまにうんざりやった。親戚連中は誰も親父を悼んだりせんし、意味分からんヤクザに借金取り立てられたり、別のヤクザに金で買われたり、正直最悪やった」


 結城の顔を見た。結城は真っ直ぐ俺の目を見て、俺の言葉を聞こうとしてくれとる。俺は、結城の目をしっかりと見つめ返して口を開く。


「結城の顔が怖かった。平気で暴力を振るうところもほんま怖かった。いきなり車に連れ込まれるわ、ファーストキスを奪われるわ、事務所に連れて行かれるわでもう俺の人生終わったくらいに思った」


 『ファーストキス』と言った瞬間に結城が目を見開いた。しかも、目線を逸らした上に手で口を覆ってやがる。おーおー何やねん。ファーストキスで悪いか。19にもなってこの経験値の低さがおかしいか。笑えや。思う存分笑たらええやんけ! 俺の目を見て笑え!


「でも……結城のそばにおると、俺は、満たされるような感覚を覚える。上手く言えんけど、土に水を遣るように、お前から何かを与えられとるみたいな感じがする。結城を怖いと思うことはすぐになくなった。それより、いつ結城にいらんもんやと思われるようになるかって、そっちの方が恐くなった。前も言うたやろ。ずっと一緒におりたいって思うようになったらどうすんねんって。もう俺、そう思っとる。ずっとここにおりたいって。結城のそばにおらして欲しいって。……お前が金で俺を買うたとか、自由を奪っとるとか手ぇ出すとか、そんなんどうでもええ。俺は、助けに来てくれたんが結城で良かったと思っとるから」


 ……ん? 結局何を言いたかったんやっけ?


「あ、せや。せやから俺は、結城からお金を貰うつもりはない! ちゃんと働いた対価として、お金を貰いたい。お前が雇ってくれへんねやったら、俺はどっか別のとこでバイトをするからな!」


 店長のアドバイス通りに言うてみた。結城の様子を観察する。が、今度は俯いて両手で顔を覆ってしまって全く表情が分からへん。
 なぜ顔を隠す!
 っちゅーかアレやな。これはなんか大の男がする仕草として間違っとるような気がするな。お前は乙女か。


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