アホ言う奴がアホじゃ!




「こっち向け」

「えー、えーと、今むり!」

「あぁ? ……あー、もうええわ。……悪い。ぶっとんだ」


 『ぶっとんだ』という謎の言葉を発して、結城が俺の上からどいた。そのまま向かいのソファにまで移動して行く。おおう……身が持たん。結城が好きやと自覚してから、この距離感にどっきんどっきんしまくりや!


「……で?」

「え。でって、何?」

「ここにおるんが嫌なんやないんやったら、何でバイトしたいっちゅー話になんねや?」

「だから、お金やて」

「だから。なんぼでも渡す言うとるやろ。アホかお前」

「何もしてへんのに金なんか貰えるか! 働くの。お金は働いて貰うものなの!」

「あのな。分かってへんようやから言うぞ。俺は金を出す。その代わりにお前はここにおる。それだけの話やろが」

「はぁ?」


 んんー? 理解できへんのはやっぱ俺がアホやからなんか?
 結城がお金を出す。はい。借金の肩代わりをしてくれたね。その金で俺を買うたから、俺は結城のもんやとかなんとかかんとか……。で、こないだの話では、大学卒業まで面倒見てくれるとかいうことになったような。


「ごめん。全然分からへん。結城がお金を出してくれるんは感謝しとる。で、ここにタダで住まわしてくれて、メシも食べさせて貰って、何でさらに金まで貰うことになんのか俺には全く理解ができへんねんけど?」

「……お前、まさかとは思うけど、俺に本気で感謝なんぞしとるんちゃうやろな?」

「当たり前やろ。は? 何で感謝してへんと思っとんのかが分からん」

「お前……アホや……」

「アホアホ言うな! アホ言う奴がアホじゃ!」

「……何で俺がこんなん一から説明せなあかんねん……。あのな、普通は嫌やろ。身に覚えの無い借金の肩代わりしたから言うて、ヤクザに買われて自由奪われて、……手まで出されてんねんぞ。何を全部受け入れて感謝しとんねんアホか。なんぼでも言うたるわ。アホやろお前」


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