目が覚めたっす




「大体分かったわ。優しくしてくれるから、助けてくれたから、今は結城さんしか頼れる人がおらんから、ヤナはそれに甘えとる。それはええよ。結城さんかって、そのつもりでヤナに接しとるんやからな。けど、僕が気に入らんのは、ヤナが結城さんを信用してへんことや。ええとこ取りしようとすんな。結城さんの気持ちはどうなんの。極道者に深入りしたくないのは分かる。恐いのも分かる。けどな、せやからって一線引いていつでも逃げれる準備すんな。自分が傷付かへんように言い訳並べんのやめろ。結城さんは自分の見せたくないところも曝け出して、お前を守ったんや。ほんまに結城さんが好きなんやったら、それに応えるべきやろ」

「…………」

「ごめんな。僕は結城さん贔屓やから、ヤナにはひどいって思われるようなこと言うとる自覚はある。でも、自分の心を守るばっかりで、結城さんに対して壁作るんは許せへん。好きって言えって言うとるんやないよ。結城さんに心を開いて、本音でぶつかってほしい。傷付いたら、ここに来たらええやん。俺はヤナの味方でもあるよ」

「……はい!」


 店長の言葉が、俺の中にストンっと落ち着いた。結城の気持ちを考えたことは、確かになかった。いつも自分のことばっかりで、いつか傷付くんやないかって恐がって、結城の表情をちゃんと見ながら、会話をしたことすらないように思う。

 ほんまに甘ちゃんや。

 ただ今は、早く結城に会いたい。顔が見たい。それから結城に触れたい。
 そう思うだけで心があったまるような感覚が、心地いい。


「……店長。ありがとうございます。目が覚めたっす」

「うん。僕も」

「へ?」

「何でもないよ」


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