はい。好きです




「結城組での生活は、ヤナにとってはどうなん?」

「よぉしてもらってますよ。山下さん、て知ってはります?」

「もちろん」

「その山下さんが、ずっと一緒におってくれて退屈はせえへんし、食べたいもんとか何でも作ってくれたり、それもプロ級に美味いし。……結城も、優しいし」

「じゃあ、よかったな」

「そうですね。……でも俺、ほんまにこれでええんかなって、思うんです」

「不安?」

「不安……です。何が? って言われたら、説明できへんのですけど。結城には、何で俺を助けてくれるんか聞いたけど、いまいち納得できへんというか。俺にそこまでしてもらうような価値はないと思うし……。将来的には結城にお金を返そうと思ってますけど、突然、すぐ返せ! とか言われへんかな、とか。……何やろ? 返済するアテがないんが、不安なんかな……。すんません。何か、ぐちぐち言うて」


 カウンターの向こうで、相槌だけ打って、俺の話を聞いてくれてた店長が、首を横に振った。


「なんぼでも言うたらええよ。全部聞くから」


 涙が出そうになる。もう泣かへんって決めたのに。


「……俺、あかんのです。親父が死んで、家で1人で、寂しくて、寝れんようなって……。でも、結城がそばにおったら、ホッとして、甘えてしまう。俺、もう1人になりたないんです。結城のそばにずっとおりたいとか、思てまうんです。どんどん結城が俺ん中ででかなって、いつか、結城に拒絶されたらって思うと……何かもう、全部終わるというか……」

「ヤナは、結城さんが好き?」

「……はい。好きです」

「そう言うたら? きっと喜ばはると思うよ?」

「俺、伝える気はありません。結城は好きやけど、ヤクザは怖い。その中で生きていく度胸もないくせに、好きやなんて、言う資格ないです。それに、今でも結城に依存しとるって自覚があるのに、自分でタガ外したら、あとはズルズル落ちていくだけやもん。だから、結城には言いません」


 店長の表情が少し曇る。それから『僕がこんなん言うていいか分からんけど……』と前置きをして、コーヒーカップを置いた。


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