……だっこ




 風呂から上がるとソファで縮こまる花月が目に入った。昨日も、ついでに言うたら一昨日も、俺が風呂から上がった時にそうやってソファで縮こまっとったな、と記憶の姿とだぶらせる。


「湯冷めするやろ。さっさとベッド行け」

「……むり」

「何が無理やねん。風邪引いても知らんぞ」

「……だっこ」


 身体を縮こまらせたまま、両手だけ俺に伸ばすその仕草……可愛すぎるやろボケ。
 わざと大きいため息を吐いて花月のそばにしゃがんだ。たったそれだけ。俺がため息を吐いただけで、花月の瞳は不安に揺れる。それが堪らん。俺の存在がでかい証拠。俺の反応で一喜一憂する様が愛しい。
 怒っとる訳やないと分からせるように出来る限り優しく抱きしめて、そのまま立ち上がる。子供にするみたいに軽々と持ち上げられるこの身体には脂肪や筋肉なんてもんがほとんどない。贅沢させて、太らせたい。こんな身体、俺がちょっとでも強く力入れたらすぐに壊してしまいそうや。


「……花月」


 ……だんまり。
 ベッドに降ろそうとしても離れようとせん可愛い奴。一生懸命俺の身体に抱きついてくる。


「どうした?」

「……このまま一緒に寝て」


 可愛いすぎるやろ。このふざけた牛のパジャマやなかったら確実にひん剥いて襲っとる。


「分かったから。一回離れろ。こんな抱きつかれ方されとったら寝れん」


 そう言うと素直に離れて、何でかベッドの上で正座をする花月。そんな意味の分からん姿も可愛い。結局、何でもかんでも可愛い。


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