え、ちょ。
「山下さん、どうしてるん？」
花月を拉致した犯人グループの捕まえた２人には俺が高校生の時分に何かして恨まれとったらしい。正直、覚えがない。高校までは狼のお守りってことで全寮制のええとこに行かせてもらっとったし、そこでは割と大人しくしとったもんやけど。まあ街中で出会った近くのあかんタレ高の奴やったら何度かしばいたこともあったかもしれん。
結局逃げられてしまったもう１人の男の正体は鈴音しか知らんし、じじいにも清次さんにも報告はしてない。捕まえた２人はええように使われたってことにも気付かんと自分らが主犯のつもりでおったし、鈴音と同種の人間を追ったところで時間の無駄や。
ヘマをした山下のことを守って欲しいと花月に言われたと、鈴音から聞いた時は、やっぱり花月は俺のそばに置いとくべきやないと改めて思ったな。
今も、山下のことを心配しとるみたいやし。実際、組で山下の手を心配した奴なんか、風見くらいのもんちゃうか。風見は風見で、負い目もあったやろうし。あいつも優しすぎて、あかんな。
「山下はしばらく料理は無理やろうな。せやからメシは何か買うて来させる」
「そういうことを聞いとるんやなくて、生活に支障はないんかとか、痛みとか、そういうのが知りたいねん」
「風見と一緒におるから、なんやかんや風見が世話しとるやろ。そのまま一緒に暮らすことにしたらしいし、山下にとったら僥倖っちゅうか……何なら怪我してラッキーぐらいには思っとるかもな」
「どういうこと？」
「山下は風見にベタ惚れしとる。……俺からしたら風見も大概やけどな」
ギョッとした表情の花月も可愛いな、とかいらんことを考える自分も大概やな。ほんまに自分でも呆れる。
「せやから明日からしばらくは俺が大学まで送る。迎えも行けたら行くわ」
「……は？」
「俺の車にはいかにもで乗りたくないとか言い出しそうやから、なんやしょうもない軽自動車買うといたぞ。あとお前、これから大学終わったら教習所行け。鳴海がお前の友達と一緒に行けるように申し込みしたらしい。何ていう奴やったか……みなみ、とかいう奴。免許取ったら、そのしょうもない軽自動車、自由に使てええから」
「え、ちょ。車って」
「俺が俺の恋人に車をプレゼントしたって何の問題もないやろ」
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