守って下さい




「着いたよ」

「……ここに、俺のお母さんがいてるんですね」

「うん」


 なんとなく、車から降りるのを躊躇う。こんなでっかい家にお母さんがおるって言われたって、全然現実味がない。


「かづっちゃん」

「はい」


 鈴音さんの方に向き直ると、俺の方に深く頭を下げて、鈴音さんは謝った。


「ごめん。こんなことになってしまって、ごめん。俺の問題に巻き込んで、傷付けて、本当にごめん!」

「え……」

「巽さんは自分のせいでかづっちゃんを危険な目に遭わせたって思ってる。でも、本を正せば俺のせいなんだ。だから、ごめん。……謝ったって何も変わらないし、俺が謝って許されたいってだけなんだけど、でも……何か、俺にできることがあったら言って。何でもする」


 鈴音さんが自分のせいって言うのは、おしゃべり野郎が鈴音さんに会いたいって理由で今回のことを計画したからやろう。
 でもそれって、鈴音さんが悪い訳やない。それに今日のことで傷付いたんは、俺やなくて山下さんや。俺を全力で守ってくれた。大怪我をさせてしまった。せやから……。


「山下さんに、逃げてしまってごめんなさいって、守ってくれてありがとうって伝えて下さい。もしも、山下さんが責任を取らされるようなことになったとしたら、山下さんのこと守って下さい。どうか、お願いします」

「かづっちゃん……」

「さっきは、ガムテープとか外してくれて、ありがとうございました。……じゃあ、俺行きますね」


 意を決して車から降りた。家を見つめる。緊張がやばい。インターホンを押したら、誰が出るんやろう。こんな立派な家やったら、お手伝いさんとかおったりするんかな。
 そんなことを思いながら、インターホンを押した。変に力が入って手が震えた。


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