言いよったー!




 チンピラ2人に大人しく付いて行くと廃工場のいわゆる工場部分に出た。そこには既に結城が立っとって、俺は嬉しさとか申し訳なさとか何かいろいろ混ざった変な気持ちでいっぱいになってしまった。そのせいで若干目が潤んでしまったことは否定せえへん。はい、事実です。
 結城は俺を見て、舌打ちをした。表情はいつも通り能面。やけどイラついてる感じはする。怖い。


「つーかさ、まじで1人で来るか普通? そんなにこのガキが大事なわけ?」

「…………」

「このガキのケツがそんなにお気に入りなんですかー? まあ俺らがさっき可愛がってやったからガッバガバだけどね」


 早速言いよったー! 開口一番の勢いで言いよったでこいつー! 何それ何それ。よっぽど言いたかったんちゃうん。それ言いた過ぎてしゃあなかったんちゃうん。


「……お前ら何か勘違いしとるんちゃうか」

「は? 勘違い?」

「俺がそいつの身を案じてノコノコ1人でここに来たと思とんか? そいつのケツ? 知らんわそんなもん。アホちゃうか」

「ちょ……!」


 話が違うとでも言いたそうに俺の方……というか、俺を捕まえとく役割をしとるはずのおしゃべり野郎の方を向いたんやろうけど、もう遅い。『結城巽に顔を見られる前に逃げる』言うて、だいぶ序盤からおらへんかったで。


「そんなもん、もういらん。犯すなり何なり好きにせえ。侠心会にちょっかい出した時点でお前らの未来はもう決まっとんねや。……何ならそいつのケツでええ思いできて良かったのう。地獄に持って行く思い出には十分やろ」


 淡々とした口調でそんだけ言い終わる頃には、チンピラ2人は完全に縮み上がってて……まあおしゃべり野郎のトンズラもなかなか効いとるんやろうけど……俺を人質にして何とか結城の優位に立とうとしたらしい。


「……こっ、こいつを無事に返して欲しいんだったら! お、お俺らに手を出すなっ!」


 背後から首に腕を回されて、締められる。口にガムテープが貼られとるせいもあってかなり苦しい。
 でもそんな状況を見ても、結城の表情は一つも変わらんと、目は冷たかった。


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