いらんこと言わんといて下さい
俺が連れて来られたんは廃工場みたいなとこで、俺がさっきまで繋がれてたとこは事務所みたいなとこやった。そこからおしゃべり野郎に連れられて、休憩室みたいなとこに行った。そこで他の2人、つまり俺を捕まえた奴らが寝転んで漫画を読んどった。
「結城巽、来たよ。行こう」
おしゃべり野郎がそう言うたら、他の2人は嬉しそうっていうか、興奮したっていうか、何かそういう下品な感じで笑いながら立ち上がった。
「まじで来たのかよ。すげーな。こいつってやっぱ結城の恋人かなんかかよ?」
「こんだけ可愛らしいツラしてんだから、おかしくはねーよな。本気ってことはねーだろうけど、性欲発散のおもちゃみてえなもんじゃね? 超お気に入りのさ」
「じゃあやっぱヤッときゃよかったな。結城が気に入ったケツに突っ込んで汚してやるってのも面白えじゃん」
……キモ。率直にそう思った。恐怖よりまず嫌悪感が先やったんは、結城が来てくれたってことと、今そばにはおしゃべり野郎がおるっていう安心感があるからなんやろうな。おしゃべり野郎は山下さんを傷付けたクソ野郎やけど、こいつらみたいな下衆ではない感じがする。
「そう言っちゃえば? どんな反応するだろうね」
俺の心の中のフォローが粉々に崩れ去った。このクソ下衆野郎。いらんこと言うなアホ。結城にまじで俺が犯されたって誤解されたらどないしてくれんねん!
……え、こいつもしかしてこういうやり取りを見越して俺の口にガムテープ貼ったんちゃうやろな……? 俺が否定できへんようにするために。
「いいねー。そうしようぜ」
「すっげー嫉妬したりしてな? だったらまじウケるわ」
こいつらの妄想の中の結城がどんなリアクションをしとんのか知らんけど、大したことにはならんぞ。それはけしかけたおしゃべり野郎の表情からも明らかやぞ。
おーい。見てみいて。めっちゃお前らのこと馬鹿にしてんでこいつ。腹ん中で絶対笑てるって。まじで。
だからいらんこと言わんといて下さい。お願いします。
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