うん、うるさい。




「俺が、結城を嫌ってへんのが……おかしいか?」

「おかしいね。断言するよ。君は、結城巽に関わるべきではない。後で困ったことになるのは君の方だよ。今だってそうだろう? 結城巽のそばにいたせいで君は誘拐をされた。俺のように酔狂な人間じゃなければ、君は暴行や性的な屈辱を受けていただろうね。もしくは殺されていたかも。現に、他の2人は君に性的なことをしてやろうかと楽しそうに話していたよ」

「な……っ!?」

「事実だ。それを実行させないために俺はここにいる。……今、恐怖したろう? 結城巽のそばにいる限り、君はそういう危険と常に隣り合わせなんだよ」


 恐怖したろう? ……ハァーン!? しーまーしーたー! するに決まっとるやろ。自称うさぎちゃんやぞ俺は。結城とおったらそういう目に遭う? 結城はヤクザで悪人や?
 それがどうした。知っとるわ! それでも、俺にとったら恩人で、好きな人で、ずっとそばにおりたいと思える人なんや。俺がそう思っとるだけなんやから、お前になんやかんや言われる筋合いないんじゃ。

 ……でも、こいつの言っとることが正しい。分かっとる。その通り。せやからもう何も言わん。何言うても言い負かされるし!


「……さて。暇つぶしのおしゃべりはこれくらいにしようか。来たみたいだよ。結城巽が」

「へ? 何で分かるん?」

「耳が良いんだ。それに、結城巽には隠す気がないようだし」


 おしゃべり野郎が立ち上がった。メシって言うて持って来てたコンビニのビニール袋から、ガムテープを出しとる。
 待て。いや、待ってくれ。それは……ちょーっとまじでほんまに心から勘弁してくれ!


「口はええやん、俺黙っとくし……?」

「それは無理だね。君は必ず喋ろうとするよ。ガムテープは貼っておいた方が君の身の安全度は上がるからね、俺を信じて」

「は!? 信じれるかい!」

「うん、うるさい。痛いことをされたくないなら口を閉じて大人しくしてね。押さえ付けて口も髪も引っくるめてぐるぐる巻きにするよ?」

「…………」


 髪の毛をガムテープで一緒くたにするとか、鬼か。ハゲるやんけ。俺のなけなしの髪の毛が減る。将来のために置いとかなあかんのに。
 ……とかって考えられる余裕があることに気付いた。結城が来てくれたって聞いて、ちょっと安心したんかな。


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