好きです
「やればできることを、やろうともせん奴は俺は嫌いや」
はっきり言うた。俺はもう極道にどっぷりで、この道でしか生きられん。それは自分が選んだことやから後悔はないけど、まだまだ選択肢なんかなんぼでもある山下が、楽な道歩こうとするんが俺は嫌やと思った。
「……ほんまのこと言います。俺、ただ風見さんのそばにおりたいだけなんです。何言うとんねんって思われるんは分かってます。でも、俺、風見さんと会えへんなんのが嫌なんです」
「……は? 何言うとんねん」
「俺、風見さんに惚れました」
「…………。……ちょお待て」
「俺をここに置いてください」
「待てって言うとるやろボケ」
「風見さんのことが好きです」
山下の顔はこれ以上ないほど真剣で、ただ俺のメシ作るだけの仕事とも言えんようなことを続けたいから言うとるようには見えんかった。
「……一応、聞くぞ? 自分で言うのもなんやけど、それは人柄に惚れたとかそういうやつか? それとも、……性的な意味も含むやつか?」
「両方です」
俺のもやっとした質問に対して、簡潔にスパッと答える山下。果たしてこの状況で、何て言うてやるんが正解なんか、俺にはさっぱり皆目見当も付かん。
「お前、男は無理やって言うとったやんけ。ほんで俺もそう言うたし」
「確かに言いました。男は無理です。ちんこ勃つんは女です。ほんでも、風見さんは別です。ここまで言うたんで言うてしまいますけど、俺こないだ1回風見さんをオカズにしました! すいません!」
「ああ!? そんなこと言われたら余計ここに置かれへんやろが! アホかお前!」
防衛本能なんか何なんか。俺の身体は勝手に山下から距離を取った。つまりそれが、俺の本心っちゅうことやろう。
でも、心底不快かというと……そうでもない。
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