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そして、後日談。
OVERFLOWのみんなとご飯を食べていると、メンバーの中でも指折りの節操なし雄飛が声を掛けてきた。
「エミリー、お前全然食ってねぇじゃん。俺が食わせてやろうか? 何なら、俺の……」
「雄飛」
雄飛の下ネタを遮るようにボーズが雄飛を呼んだ。他のメンバーが『言わせねぇよ?』と言ってゲラゲラ笑っている。ばかじゃないの?
「雄飛が本気でエミリーにそんなことしようと思って言ってるんじゃないって分かってる。けど、むかつくからやめろ」
「大事な幼馴染みだからやめろってか? お前にそんなこと言う権利あんの? つか、誰に向かって命令してんだ? ああ?」
あらら? 何この険悪なムード。雄飛ったら虫の居所が悪かったのかしら?
変な空気になったのに気付いたリンさんが、慌てて仲裁に入ってくれた。
「何やってんだお前ら。さっき暴れたばっかだろうが。血の気多いな。まあ落ち着けって。何があったんだ?」
「雄飛がエミリーに下ネタ言った」
「だからそれのどこが悪いんだっての。いつものことだろうがよ」
「確かにそうかもしんねぇけど開き直んなよ、雄飛。お前それあんまり褒められたことじゃねぇぞ? それにボーズも。今まではスルーしてただろ。何で今は怒ったんだ?」
「だって、エミリーは俺の恋人だし。もう他の奴に下ネタなんか言わせない。俺のだから」
ほとんどのメンバーが『えー!?』という驚愕のリアクションをした。私は何だか居た堪れない気持ちになって、ボーズの方を見た。すると、狼さんがすっと寄ってきてボーズの右手首を掴んで、引っ張り上げた。
「ボーズの勝ち」
「タロ! 勝ち負けの話じゃねぇっつの。何言ってんだ」
「だってボーズが言ってんの普通のことじゃん。俺だってリンに下ネタ言ってくる男がいたらブッ殺したくなる。怒って当然だよ」
「何でそこで俺が出てくんだ?」
「だって俺はリンのことが大好きだから」
「それとこれとはまた話が違うだろ? っつーかさ、まあ、おめでたいんだし、さっきのことは水に流そうぜ? な、雄飛?」
狼さんの告白をサラッと流しながらそんなことを言われても。雄飛も若干引いてちゃってるし。その鈍感さ、どうにかならないものなのかしら? 狼さんが報われなさ過ぎるわ。
「狼さん、頑張って。いつかきっと伝わるから」
ボーズが狼さんを励ましている。ボーズも怒っていたはずなのに、今はもう狼さんが不憫という思いしかないみたい。というか、メンバー全員がそうかもしれない。
私達を祝福する空気ではなくなったけれど、これはこれで、とってもOVERFLOWらしいわよね。
「じゃあ、もう一度乾杯しましょ! 私達の交際記念と、ボーズと雄飛の仲直り記念にっ」
「おっ! いーね。音頭はボーズな!」
「えーっと、結婚も決まったので乾杯」
そしてまた、驚愕のリアクションが木霊する。誰一人、乾杯をしなかったことに驚いたボーズがキョロキョロしている。
私はそんなボーズの右手にあるグラスに、自分のグラスを合わせた。
「乾杯」
少しだけ変わったボーズの表情が、心底嬉しい時のものだって分かるのは、きっと私だけ。
end.
2013.09.09 完結
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