08
何て言おう? 何て言えば私の気持ちは伝わるのかしら?
少し考えている内に、ボーズがまた口を開いた。
「今日さ、エミリーが言われたこと、俺ほんとに嫌だった。エミリーとヤること考える奴がいるとか、絶対我慢できない。だから、俺に守らせて欲しい。幼馴染みとしてじゃなくて、恋人として守りたい」
「ボーズ……」
「好きだよ。エミリーのこと。俺、もう幼馴染みは嫌だ」
夢みたい……なんて、そんな言葉が頭に浮かんだ。声が出ない。何も言えない。嬉し過ぎて、ただもう嘘みたいに嬉しくて。涙だけがボロボロ流れた。
「エミリー? 何で泣くの?」
「ボーズ、私……っ。わ、たしも、ずっと、すっ、きだった」
「ほんと……?」
まともに話すことさえできなくなった私は、頭をブンブンと縦に振った。伝えられるなんて思っていなかった気持ち。こんなことで伝わるかしら?
私は、ずっとボーズを想い続けるだけで、いつか彼女ができたり、結婚したり、お父さんになるボーズを幼馴染みとして見ていくんだと思ってた。私はオカマだから。ボーズと結ばれるなんて、望んじゃいけないと思ってた。
「……じゃあ、俺の恋人になってくれる?」
「はい……っ!」
「やった。嘘みたいだ。俺ら今から恋人なんだ。すげー。エミリーが俺の恋人なんだ。すげー。まじすげー。恋人だって」
ポロポロと言葉がこぼれ落ちるみたいに早口で喋る時は嬉しい時。何度も『恋人』という言葉を口に出されると、私も何だか実感がなくて変な感じ。私達、恋人になったのよね。ということは……。
「ってことは、キスしたりしていいってことだよね?」
テーブルに両肘を付いてグイッと近付いてくるボーズにギョッとする。確かに今そのことを私も考えてたわよ? でもちょっと早過ぎないかしら? 今さっき気持ちを伝え合ったばかりじゃない。
「だめなの?」
「ダメじゃないわ! ただ何だかちょっと……恥ずかしくて……」
ボーズの目を見ることさえできなくなっている私がそう言うと、ボーズは『あー、うん』と言って、そっぽを向いてしまった。
怒らせてしまったかしら? そう思った私がおたおたしていると、ボーズはそっぽを向いたまま話し始めた。
「ごめん。舞い上がってた。そういうのは、ゆっくり、焦ったらだめだ。これから時間はいっぱいあるし。何十年も」
「何十年もって……」
「エミリーはお兄ちゃんがいるから、俺ん家に嫁いでも大丈夫だもんね」
……え?
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