07




「ちょっと俺ん家で、話せない?」


 帰り道ずっと無言だったボーズがそう言った。口数の少ないボーズと2人でいて、無言になることくらい今まで何度もあったけれど、今日はいつもとは違った。ものすごく居心地が悪かったわ。
 だから、すごく不安になったの。


「話、って?」

「ここじゃ、話せない」


 ここというのは、私の家の前であり、お向かいにあるボーズの家の前でもある道のこと。


「だから、俺の部屋来て」

「……えと、じゃあ、お邪魔します」



 妙にギクシャクした感じで、上がり慣れたボーズの家にお邪魔する。いつもは出迎えてくれるボーズのお母様はご不在みたい。ということは、私達、今2人っきりってことよね。やだ。何だか緊張しちゃう。

 ボーズの部屋の真ん中にはテーブルがある。冬はこたつとして使っているもので、年がら年中使っている年季もの。私は部屋に入って、そのテーブルのドアから一番近い位置に腰を下ろした。ボーズは私の向かいではなくて、斜め左になる位置に座る。それがボーズの部屋での私達の定位置。


「あのさ、」

「なに?」

「…………」

「……言いにくいことなの?」


 言葉を探しても探しても見つからないという表情のボーズ。何を言われるのか分からなくて、不安な気持ちがどんどん膨らんでいく。


「……エミリーは、俺のこと……どう思ってる?」


 大好きよ。そう言えたらいいんだけど、ボーズがどんな話をしようとしているのか分からない状態じゃ、何とも言えない。
 もし、今日学校であったことで、もう私と一緒にいたくないとボーズが思ったのなら、そうしてあげたい。ボーズの負担になるようなことは言えない。


「ボーズは大切な幼馴染みよ?」

「…………エミリーは、身体は男でも心は女の子なんだよね?」

「ええ、そうよ?」

「じゃあ、俺は、エミリーにとって異性ってことだよね?」

「そう、だけど……?」

「俺を、幼馴染みじゃなくて、男としては見れない?」


 不安と緊張と、そして欲を孕んだボーズの目に、その言葉が冗談なんかじゃないと実感する。もしかして、ボーズも……? そう思わないなんて無理。私は一気に舞い上がった。


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