四月馬鹿
「あの、さ……。俺、お前のこと、好き……なんだ、けど」
「俺もお前のこと好きだよ」
「……え? いや、そうじゃなくて、俺が言ってるのは、恋愛的な意味で……」
「分かってるよ。俺も性的な意味で言ってる」
「……」
性的!? 何言ってんだこいつ!!
……そうか! 今日がエイプリルフールだから……。
やっちまった。俺の一世一代のマジ告白が嘘だと思われた上に、嘘の悪ノリで返されてしまった……!
どうする。今から嘘でしたと言って日を改めるか。……いや、悪ノリで返答されている以上、俺に希望はないだろう。こうなったら、俺もエイプリルフールのつもりだった体で話を続けて、冗談で済ませるしか……。
失恋確定。さよなら俺の初恋。
「じ、じゃあ、やるか!」
「……マジで?」
「お前が性的な〜とか言ったんじゃねえか」
「まあ、やれるなら、俺は嬉しいけど……。やっぱ、順番的にはキスからなんじゃないか?」
「え、あ、まあ。そう、だな」
どこまで嘘付き続ける気だ。終わりが見えねえ。エイプリルフールってこんなんだったか?
「じゃあキスするから。いいよな?」
「あ、うん。いいぞ」
「目、閉じて」
分かった。ここで俺が目を閉じたら、『嘘だよ、馬鹿』ってな具合になるんだな。そうなったら俺は『どこまで続けんだよ。焦ったわー!』って言えばいい。
「……っ!」
何ぃー!? マジでキスされただと!?
「どうした? 嫌だった?」
「嫌じゃない、けど」
「けど?」
「何でこんなことすんの?」
「は? 言っただろ」
「今日、エイプリルフールだから……だよな?」
「……あ」
「え?」
「嘘だった? お前が言ったこと、嘘だったの?」
嘘じゃない。俺が言ったことは、全部本当だけど、……お前は? お前、今、エイプリルフールだって気付いたんだよな? じゃあ、お前も、嘘付いたんじゃないんだよな?
「お前が好きだよ。ほんとに」
そう言ったら、お互い自然ともう一度キスをした。おかえり俺の初恋。
エイプリルフールの告白はご注意を。
[戻る]