タロ何してーの?




 林の中でしゃがみ込んでいる俺達。俺は少し気になっていたことを訊いてみた。


「ねぇ、あの後ろにあるのって何?」

「あれはなんっかいつの間にかできてたんだよなー。ハウスらしい。ようするに畑だな」

「畑ぇ?」

「学園の所有物ではないと思うから、生徒の内の誰かのものなんだろうけど、誰のなんだろうな」

「食堂行きゃあ何でも食えるし、野菜なんかすぐに買えるのによー。物好きな奴がいるもんだな」


 その話を電話を通してバッチリ聞いていた会長が補足説明をしてくれる。


『それは野田のものだ』

「へ? タロ?」

『あぁ、春あたりに敷地を借りる申請をしてな。学園側にいくら払っているかは知らんが』

「しかも金払ってんのかよ。何考えてんのアイツ」

『知らん。ずっと黙ってろとは言わんが、声を抑えろとそこのバカに伝えておけ』

「あのさー、銀……さん?」

「なんで疑問系だよ?」

「いや、あの、……幸ちゃん、先輩が銀ちゃんって呼ぶからついそう呼ぼうとしちゃってさー。でもそれはさすがに馴れ馴れしいから『銀さん』?」

「なんでもいーけどよ。銀さんって呼ぶ奴もいるし」

『おい、呼び名はどうでもいいから、ちゃんと釘を差せ』

「あ、うん、わかった。銀さん、会長が声を抑えろって」

「了解、了解。ところでよー。タロって野田のことだろ? その呼び名何なんだ?」

「あー、タロってのは俺が付けた名前。あいつは俺の飼い犬みたいなもんなんだ」

「飼い犬?」

「そ。少しでもまともな奴になるように躾してるの」

「なんだそりゃ?」

「なんでもいーの。可愛いから」

「いや、可愛くはねーだろ」


 何でみんなタロの可愛さが分かんねーかな? あんなに可愛いのに。


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