張り込み開始
何やらチラチラと俺の顔を見てくる3番隊隊長と並んでコンビニを出る。
するとロビーの様子がおかしくなっているのに気付いた。ざわざわ、そわそわ。色めき立っているというか、とにかく俺まで落ち着かない。
「なんだぁ?」
「圭ちゃんがいるからだよん。みんな興奮しちゃってるの」
「変な言い方をするな。うっとうしい」
いつの間にか隣にいた1番隊隊長が説明してくれた。会長はそう言うが、本当にここの生徒たちは会長に対して興奮しているのだろう。よく観察してみると、どうやら性的に興奮していると思われる奴までいる。
「なんつーとこだよ。げんなりするぜ」
「同感だ。俺が一番げんなりしている」
「大変だねぇ」
ファンがたくさんいるという生徒会役員が3人もいるからなのか、ロビーの人気が増えた気がする。
さらに、その3人と一緒ににいるからなのか俺の存在を気にし始めたらしい。『あれは誰だ?』と口々に話している。
「こうなると思った。顔隠してきてよかったぜ。早く外に出よーぜ?」
「そうだな。行くぞ」
1番隊隊長から順に、管理システムを通らずに堂々と外へ出ていく。
外出許可を出す立場にいる生徒会役員だからこそできることだろうけどさ。俺も、いいの? かなり戸惑いつつもそれに倣った。
寮の外へ出て、会長と3番隊隊長の携帯を通話状態にする。液晶画面が消えるのを確認して、俺達は移動を始めた。
寮の左斜め前にある森の後ろを通り、時計塔の近くの林に着いた。
ちなみに、タロ達が作った脱出用の足場の前も通ったが、全員素通り。おそらく役員はすでにこれを知っていたと思われる。
「リンと銀次はここで時計塔を。俺と幸介は管理棟を見張る。散るぞ」
その合図で3番隊隊長と俺はそのまま林の中で待機。会長と1番隊隊長はその林の裏をさらに走って双子楠の幹の陰へと移動し、そこでそれぞれの建物の入り口を見張る。
会長たちも位置に着いたと携帯を通し報告があった。
『位置に着いた。携帯はどちらか絶対に耳にあてていろよ。携帯のボタンを押さないように気をつけろ』
「了解」
そうして始まった見張りだが、30分も経つ頃には3番隊隊長が腕のだるさを訴え始める。
「圭吾」
『なにかあったか?』
「腕が疲れる。マイク付いたイヤホン買おうぜ」
『わかった。今日はリンと交代しながら我慢しろ』
「はいよー。……リン、携帯持ち役代わって」
「オッケ」
これを契機に3番隊隊長と俺は雑談を始めた。集中が切れたとも言う。
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