まさか、あいつは
夕食の片付けを終わらせた後、鈴音はすぐに私室に入っていった。しばらくして私室から出てきたかと思えば、そのまま玄関へ行ってしまう。
それを追って、俺もリビングを出て声をかけた。
「お前今日もどっか行くのか?」
「あ? あぁ、まぁな。でも今日は朝になったりはしねぇよ」
「それにお前、その格好……」
鈴音は今、カツラもメガネも外して、カラコンなのか目が金になっている。服装も鈴音とは全く違う。
「今日の朝もそうだったよな」
「……まぁな」
「お前いつもどこに行ってんだよ?」
「外に遊びにだよ。俺、実はチームの総長でさ。やることいっぱいなんだよ」
「は? 総長?」
「まぁ、話はまた今度な! 行ってきまーす」
疑問符を浮かべた俺を置いて、さっさと部屋から出て行ってしまった。
「なんだあいつ。総長とか……あ。俺は何で気付かなかったんだ? そうか。あいつが……」
SIDE:鈴音
うーん……。さすがに同室者がいると仕事がやりづれぇなぁ。
チームの総長だって言っときゃ、夜に部屋を空けても怪しまれないよな? 本当にそのために抜け出す日もあるんだから。
さて。空牙の方はまた今度だ。それより今は、あいつに集中しよう。
エレベーターに乗る。見た目は一般カードキーだが、ゴールドカードキーと同じ効力を持つと言われた俺のカードキーをカードリーダーに通して、15階のボタンを押す。エレベーターは正常に作動し、目的の15階に着いた。
15階の目的の部屋の前に立ち、インターホンを鳴らした。少しの間の後、部屋の主が出てきた。
「……リン、か」
「こんばんは。会長」
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