悩み多き年頃
部屋の中に全て運び終わると、今度はそれを部屋に配置する作業が始まった。
「さーてと、まずはこの元からあるソファを俺の部屋に入れるか。いいだろ? 空牙」
「おぅ。じゃあお前そっち持て」
「ほーい。タロー、ドア開けてー」
「はーい」
元からあったソファとローテーブルを俺の部屋に運び入れたあと、空牙はダイニングテーブルの組み立て係、俺と狼はそれ以外に分かれた。
そして、すべての家具を配置し終わり、俺は新しいソファに寝そべった。
「いやぁ〜。いいですなぁ、この余裕で寝転がれるソファ」
「あー、なんか俺この感じ気に入ったなぁ」
「だな! お前センスいいなぁ。そうだ。タロ、手伝ってくれてサンキュな。また礼するわ」
「そんなのいいよ! だって俺、鈴音の言うことならなんでも聞くもん」
「バカ。嫌なことはちゃんと嫌って言うんだぞ?」
「嫌なことがあればね」
コーヒーを淹れて、新しくなったリビングでニュースを見ながら一服する。そのニュースを見て、一郎がいない理由に合点がいった。大物政治家の収賄ね。これでいくらもらったんだか。
夜になり、タロを部屋に帰して、空牙と新しいテーブルで夕食を食べ始めた。
「野田先輩も一緒じゃなくてよかったのか?」
「あぁ、うん。だって晩メシは空牙がお金出してくれてるし、それに……学校でもずっと俺にベッタリってのはどうかと思うんだよな」
「どういうことだ?」
「うーん。タロってさぁ、俺に会うまで友達っていなかったみたいで……出会った当時はとにかく俺にベッタリでさ。俺が他の奴と喋るのでさえ嫌がるくらいだったんだ」
「容易に想像できるぜ」
「さっきみたいに俺の言うことはなんでも聞くとか本気で言うし。ずっと一緒にいてやれるならベッタリでもいいんだけど、……いや、よくはないんだろうけど。学年も違うし、俺はこれからずっといてやれる訳じゃねぇし……ってメシ1つで何を大袈裟に話してんだろうなっ、俺! ははっ」
「分かるよ。お前が言いたいこと」
「そ、そうか!」
「お前、ちゃんと考えてんだな。野田先輩のこと。大事に思ってんだな」
「あぁ……そうなのかな、うん。そうなのかも」
「…………好きなのか?」
「好き、ってまさか恋愛?」
「……おぅ」
「ないない! 俺、恋愛に興味ねーから」
「そ、そうか……」
「さて! デザートでも食うかな!」
そそくさとキッチンへ行く俺。なんとなく空牙の前から逃げたくなった。
タロを大事に……? バカか。タロはリンと栗原鈴音の友達だろ。俺の、レオンの友達じゃない。今までだってずっと、そう割り切ってきたはずだろう?
頭を冷やせよ……俺は、レオンなんだ。
SIDE:空牙
「ふぅ……」
恋愛に興味ない、か。
これは『いい友達』から攻めていっても、結局友達止まりになるんじゃねーか? 案外あっさり野田先輩に持ってかれちゃったりして。お揃いのブレスしてたしなー……。
「どーすっかなぁ……」
無理矢理襲ってみる? ヤってみたら男同士のセックス気に入るとか。……ねぇか。ねぇよな。鈴音には無さそうだ。
でも、野田先輩があんだけベタベタ触っても嫌がらないってことは、スキンシップは嫌いじゃない? それとも、先輩だけは特別……?
「恋って難しいんだな……」
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