いいひと




 寮の管理システムを俺が通るとすぐに、執務室から寮長が出てきた。


「栗原君! 待ってたよ。栗原君に荷物がいっぱい届いてるんだ」

「荷物……って、あ! 家具頼んだんだった」

「そうそう! ほんとにいっぱいあるから俺も運ぶの手伝うけど、他に誰か手伝ってくれる人いる?」

「じゃあ空牙も呼びますね! あとタロも。すぐに戻ってくるんで待っててくれますか?」

「あ、うん!」


 俺は空牙とタロを呼びに走った。2人をそれぞれの部屋で捕まえて1階に戻る。


「寮長ー! お待たせしましたー!」

「タロって……野田のことだったの!?」

「そうですよ。タロってあだ名なんです」


 タロが寮長に近寄って、俺達に聞こえないような小声で何かを言ったようだ。
 サーっと顔が青くなる寮長。なにを言ったんだか。うちのバカ犬は。


「じゃあ荷物運びましょっか」

「執務室の中にあるんだけど、一般生徒は入っちゃいけない決まりだから、ここで待ってて」

「はーい!」


 急いで寮長執務室に入る寮長。1人であんなに一生懸命に運んでくれて、ほんといい人だなぁ。
 ダイニングテーブルの組立前のもの。かなり重いらしく必死の形相。そしてそれの付属の椅子が4つ。ローテーブル。巻いてあるラグ。カーテン。2人掛けソファ。最後の3人掛けソファは、もはや引きずられて寮長室から出てきた。


「ふぅ……っ。はい! これで全部だよ」

「とりあえず全部エレベーター前まで運ぶか」


 空牙の提案で、すべての家具をエレベーターのそばまで運んだ。
 エレベーターを1階に呼び、まずは俺がローテーブルとカーテンと共に12階へと上がった。それらを部屋の前まで運んでエレベーターに戻ると、空牙とタロが3人掛けソファを協力して運んでいた。なんとなく微笑ましい。

 なんとか全部12階まで運び終えた。寮長にきちんとお礼を言って、3人で部屋の中に家具を運び入れる。


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