モンブラン>>>>>>>>空牙




 前をゆっくり歩く小麦に追いついた。心配そうに鈴音が駆け寄る。


「おい小麦、大丈夫か? フラフラじゃねーか。こんなに汗かいて……一生懸命走ったんだな」

「鈴音は一筋の汗すらかいてないさー。やっぱ人間じゃないさー」

「汗かくとクリーム落ちるしなー」

「そういう話じゃねぇよ」


 1−Aの教室に帰って制服に着替える。今度は鈴音を見る生徒が増えたが、それらの視線から巧みに隠すことに成功した。
 そして、4時間目までの授業が終わり、ついに鈴音が待ちに待った昼食の時間。グーグー鳴る鈴音のおなかの音がツボって4時間目は授業に身が入らなかった。

 特別棟の1階にある学食の特別フロア下で俺、鈴音、小麦の3人で昼食を食べる。もちろん、鈴音は今日も食前にデザートのシュークリームを3つ食べていた。


「学校の食堂にも、この生徒会専用フロアってヤツあるんだなー」

「うん、でも昼ご飯の時に生徒会の皆様が来られることはまずないさー」

「なんで?」

「生徒会室はルームサービスが頼めんだよ」

「はぁ?」

「役員の特権ってやつだ。なんでもタダで食べられる」

「しかも噂じゃあ、食堂とは違うメニューで豪華らしいさー」

「マジで!?」

「そうだな。確かに食堂とは違うな」

「てか、なんでお前はそんな詳しいの?」

「だって俺、中等部で役員だったし」

「マジで?」

「マジもマジさー。中3の時は生徒会長だったんだから」

「えぇー、似合わねー」

「しゃーねーだろ。投票の結果だ」

「じゃあお前アレか、学園内で一番抱かれたいと思われるという悲しい称号を貰ったんだな」

「悲しくなんかないさー。冴島は自分の親衛隊の中のかわい子ちゃん達をムグ……っ」

「つまんねーこと言うんじゃねーよ!」


 小麦の口を押さえる。自分のしてきたことがバレていないかチラリと鈴音を伺い見た。


「うっひょー! きたぜー!! 俺の特大モンブランッ」

「…………」


 全く相手にもされていないのも悲しい。


「ゔぅ〜!!」

「おぉ、ワリ」


 つい力が入って、小麦が本気で苦しそうにしていた。こんなにも誰かに惹かれる時が来るなんて思わなかった。今までの軽かった自分が恥ずかしいって初めて思った。


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