白と赤
高等部の敷地外、タロのバイクを隠している場所まで帰って来た。即座にバイクを降りる。
「あぁー! 着いたぁ! 重かったぁー!!」
大きな荷物を店から1時間半近く持ち続けていた。なんとか持ちこたえていたが、限界に近かった腕を解放する。足元に大量の荷物が散らばった。
バイクを隠し終わったタロが、文句も言わずにせっせと拾ってくれる。何から何まで……すまないねぇ。いい奴だお前は。
「タロ悪い。サンキュな。あと今日ってかもう昨日か、ほんと色々付き合ってくれてありがとな!」
「ううん、俺もすごい楽しかった! それでね……」
ブルゾンのポケットをさぐる。そして、プレゼント用の包装がされた8センチ四方ほどの箱を取り出した。
「リンにプレゼント」
「プレゼント?」
箱を受け取って、包装を解き、中身を見た。
「おい、コレって」
俺がさっき買うの迷って結局買わなかったブレスだ。やっぱ買えばよかったって言ったから、買ってくれたのか?
でもいつの間に……?
「お前コレ……高かったろ」
「そんなことないよ」
いや、高かったって。俺、値段知ってるもんよ。デザインをどんだけ気に入ったって皮のブレスに4万ってないよな……って思ったもん。
「実は、俺と色違い。それでも付けてくれる?」
タロが左手首に付けた赤のブレスを見せた。俺にくれたブレスはホワイト。めでたい色合いだな。
「もちろん付ける! ありがとなー、タロ! すげー嬉しいよ」
「よかった!」
「でもさ、1個だけ聞くけど、鈴音とリン、どっちに付けて欲しい? 知ってる奴はいるけど、一応別人って体でいきたいからさ、俺は」
まぁ依頼を完遂するにあたってさ、一般の生徒に鈴音とリンが同一人物ってバレると、やっかいな状況がさらにやっかいなことになるからね。
「せっかく貰ったのに悪いけど、どっちかでしか付けらんない」
「じゃあ、鈴音! 鈴音に付けて欲しい」
「りょーかい。じゃあ今日から早速付けるわ。ほんとにありがとな!」
「ううん。鈴音とお揃い嬉しい! 俺、首輪にしとけばよかったなー」
「じゃあ、首輪は俺が買ってやるよ」
「え! ほんと!?」
嬉しそうに俺を見るタロ。冗談で言ったんだけど……え、マジで首輪欲しいの?
「首輪ってマジで言ってたの、お前?」
「うん! 俺はリンの飼い犬だもん」
「しゃーねー。ご主人様がイカツい首輪買ってやるよ、バカ犬」
「やったぁ! リン大好きー!」
後ろから抱きしめられる。タロの大きな身体で抱きしめられると自分の小ささを再確認できてしまうな。どちくしょう。
「はいはい、帰るぞー。荷物塀の中に入れるの手伝ってくれ」
「はぁーいっ」
俺が塀の上に座り、タロから受け取った荷物をポイポイ下へ投げ入れていく。全部を塀の内側に落とし終わると、2人共も塀を乗り越え、ちょうど開いたばかりの寮へ帰った。
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