ショボーン
カズはお店の戸を開けるなり、持ち味を爆発させる。訛り全開だ。
「リン! リンだないか! 会いたかったじょ!」
そして素早く俺の隣に座った。
「久しぶりだなぁ! 昼に電話でも話したけど、カズ宝生に戻ってくんのか?」
「あーさっき話つけたけん、来月から通うことになっちょー。2−Aだぢ」
「ほんとかぁ! よかったなぁタロ! 友達が来てくれて」
「うん、そうだね」
「タケさん、俺ねめそしーとおにぎりごしなはい」
「はいよ! そう言う思て作っといたったわ。飲みもんはウーロンでえぇやろ?」
「おん。あーがと、タケさん!」
訛った者同士の会話。
俺とタロはなにがなんだかといった表情。やはり直接話しても、理解しきれないカズの言葉。
「あ、あのさぁカズ? 学園に戻ってくる前に、その〜言葉? ちょっと標準語に近づけた方がさ、なにかと……ホラ。なぁ?」
タロに同意を求める。
「え、あーうん。何言ってるかわかんねーよ、カズ」
「コラッ、もっと言い方ってもんがあるだろっ」
突然、タロに振ったくせに、正直に言ったタロを焦って怒る理不尽な俺。タロはしょぼんと俯いてしまった。
「あぁー、わかっちょるだどもな……。まんだじっとさきの話だけん練習すーよ」
「ん? ……うんっ、あはは!」
やっぱり理解できない。とりあえず笑ってごまかした。
その後、テーブル1つ1つに回って、みんなと久々に話して笑い合った。
レオンに依頼をされて、リンとして作ったチーム。最初は、ただの道具だった。タロだって利用できると思ったから近付いただけだ。
でも、こんなにも居心地がいい。こんなにも楽しい。俺はまた姿を消さなくちゃなんないのに。
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