未成年は呑んだらあかん




 百貨店内の男性トイレの個室でカラコンを黒から金に入れ替えて出てきたリン。
 金髪金眼の美少年などと言われて、リンの画像が3パターンも出回った。俺としては気が気じゃない。


「いいか? この姿の時はリンって呼べよ? 鈴音は禁句だぞ」

「わかったっ」


 リン。
 可愛いリン。
 大好きなリン。


SIDE:鈴音

 俺は百貨店の駐輪場でバイクに乗るのを苦戦していた。


「大丈夫? 乗れる?」

「あぁ、大丈夫だよ。なんとか……。でも曲がる時とか注意してくれな?」

「わかった。じゃあ行くよ?」

「おぅ」


 大量の袋を前や後ろに抱えてて、少し辛い。俺を気遣っていつもより安全運転なタロに感謝しつつも、もっとスピードを出して早く行ってほしいとも思った。

 そうして着いた所。OVERFLOWの溜まり場になっているというか、なんだかんだお世話になっている居酒屋『呑んだらえぇやん』。


「こんちゃーすっ!」


 店に入ると同時に店内はすでに大盛り上がり。今日はOVERFLOWの貸切になっているのか、店内にいるのは懐かしい顔ばかりだ。
 そしてメンバーの手にはクラッカーが見える。クラッカーを鳴らして出迎えてくれるんじゃないのか。何のために持ってんだ。

 戸口から店内にいる顔ぶれを見て、自然に笑顔になる。


「なんだーお前ら、全員いんじゃねーかよ。ほんとに解散してなかったんだな。なんか嬉しいよ、ありがとな!」

「なんやリン、そんなとこ立っとらんと早よ座れ。今日は久々にお祝いや! OVERFLOWの貸切やぞ」

「タケさーん!」


 呑んだらえぇやんの店主、合川武史。通称タケさん。リンの父親的存在。
 俺はいつも座っていたカウンター席に座った。


「狼も座れ。もうすぐカズも来るからな」


 タロも以前と同様に、俺の隣に座った。
 全部で4席あるカウンター席は、いつも俺、タロ、カズの特等席だった。


「お前らどんどん頼めよー! ただ今日みたいにめでたい日でも酒は出さへんぞ」

「お前らー! 今日は俺のオゴリ! ずっと待っててくれた礼だ! 好きなだけ食え! んでジュースを飲め!」


 再び盛り上がる店内。
 やっとここでクラッカーが鳴る。今かよ。


「なんや羽振りえぇやんけ。しゃーないおっちゃんからの祝いや、今日はまけたろ!」

「ありがと! それでも足んなかったらツケね?」

「俺が出すよ」

「タロはいーの! ほらお前が頼まねぇとみんな遠慮して食わねぇだろ。どんどん頼め、な!」

「わかった!」


 タロが大量に注文したのを契機に、全員が好きずきに注文し始めた。


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