母ちゃん




「ほんじゃま、そろそろメシ作るかな」

「おー! 楽しみだ」


 俺の私室を出て、空牙はリビングのソファに座ってテレビを付ける。俺はさらにリビングを出て、キッチンの冷蔵庫の前でメニューを考えている。


「なににしようかな〜っと。あーなんかシチューの気分! クリームシチュー!」


 それが聞こえたらしい空牙が地味に喜んでいる声が聞こえる。


「クリームシチューか。いいな」


 じゃあ、腕に縒りをかけて作りますよん。
 縒りをかけた結果、料理を作り始めて2時間後、夕食が出来上がった。
 リビングの小さなガラステーブルに食器を並べて、空牙はソファに、俺はその向かいで床に座った。


「いただきまーす!」

「いただきます。うまそうだな!」

「だっろー! デザートもあるぞっ」


 今晩の献立は野菜たっぷりのクリームシチュー、カリカリに焼いたガーリックトーストのブレッドサラダ、そしてデザートのカボチャのタルト。


「うめぇ! このサラダうまいな! シチューもすげーうまい! お前料理上手いんだな」


 けっこうな勢いでシチューを食べ進める空牙。作った者としては嬉しいの一言である。


「食べるのが好きだからな。作るのも好きだ」

「あぁ、なるほどな。じゃあデザートも楽しみだな」

「シチューのおかわりいるか?」

「あんのか! じゃあおかわり」


 立ち上がった俺に器を手渡す空牙。なんか無邪気で面白い。それを受け取ってキッチンへシチューを入れに行く。


「いっぱい食えよー。お前昨日と今日の食事見てると野菜足りてないみたいだからな」

「お前はどこぞの母ちゃんか」


 シチューを入れた器を空牙の前に置く。


「サンキュ」

「デザートはカボチャのタルトだからな」

「……野菜徹底してるな」


 このあとタルトの4分の3を俺が、その残りを空牙が食べた。朝食べない空牙の栄養バランスは俺が守る!


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