お買い物




「じゃあ俺みんなに声かけとくねっ」

「おー」


 タロの部屋を後にし、再び自分の部屋に戻った。


「お、ずいぶん早かったな」

「まぁカズに電話するだけだしな」

「配達された食材、冷蔵庫に入れておいたぞ。あと洗濯物はお前の部屋のドアノブにぶら下げといた」

「おーぅ、サンキュー」


 ドアノブに掛けられたクリーニングの袋を取って私室に入り、クローゼットを開けた。そして悩む。


「うーん……」


 今回は鈴音用のダサめな服しか持ってないからなぁ。あの金髪金眼の俺に似合う服はないな。こんな服、リンって感じじゃねーし。
 とりあえず鈴音の格好で出掛けて、タロに買い物付き合ってもらうかな。

 クローゼットの中の服に着替えてリビングに戻る。俺が部屋着っぽくない服に着替えたのに気付いた空牙。


「あ? 出掛けんのか?」

「メシ食ってからな。それより空牙、俺この部屋の家具買おうと思うんだ。お前の部屋でもあるし、一緒に選ぼうぜ」

「家具?」

「うん。メシ食うのにこんな低くて小さいテーブルじゃあな。あともっとでかいソファ。180センチくらいのと小さいのもう1つ。それからテーブルの下にラグも欲しいな」

「ふーん?」

「選ぼうぜ。俺の部屋のパソコンで」


 今日は俺の私室に備え付けられたパソコンで、家具を選ぶ。パソコンを操作しているのは空牙。俺はさり気なく空牙に見られると困るものを片づけている。闇屋で買った睫毛と眉毛に色を付けるマスカラとかヘアスプレーとか変装用の品々をね。


「これとかいいんじゃん?」


 空牙が俺の希望通りの大きなソファと小さなソファがセットになっているものを指した。


「お、黒か。いいじゃん。ついでにカーテンもそれに合うように変えるか」

「カーテンね」

「あとラグとダイニングテーブルな」

「了解。ダイニングテーブルは、2人掛けでいいのか?」

「んー、4人掛けで」

「4人掛けか……これは?」


 空牙の横からパソコンの画面をのぞき込む。空牙が指しているのは、トップが強化ガラスで足は黒く、椅子も黒のモダンなテーブル。ラグはグレーを選んだ。画像を見た限りでは、割とフカフカとしていそうな印象。


「うん、いいな! お前センスいいな! じゃあ精算画面に行ってくれ」


 カードキーをカードリーダーに通して精算を済ませる。


「お前持ちでよかったのか?」

「いーって、いーってこんくらい」


 ソファ、それに見合うサイズのローテーブル、ラグ2つ、カーテン、ダイニングテーブルでざっとウン百万。そんくらい全然余裕よ。
 依頼によって様々だけど平均すると一度の依頼で5000万は報酬をもらっている俺ですから。


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