1310号室
あとから気付いたが、俺はタロの部屋が何号室か知らなかった。12階より上の部屋で一般の生徒なんだから13階だってことは分かっていた。なぜかそれだけで分かっているつもりになってた。
しょうがなく13階にある部屋のネームプレートを順番に見ていく。結局、タロの部屋はフロア一番奥、1310号室だった。
「おー、あったあった」
インターホンを押す。
「…………あれ?」
誰も出てこない。再びインターホンを押した。
「……誰もいねぇのかな?」
電話すっか。……ってあれ? また鈴音用の携帯忘れた。あーもう、めんどくせー。
また部屋に帰んのもめんどくせーよ。ん〜、どうすっかなぁ。
「あれ? 鈴音?」
「タロ!」
買い物袋を下げてタロが部屋に帰ってきた。パアッと笑顔になる顔がたまらなく可愛い。
「え! 俺に会いに来てくれたのっ? 入って入って!」
タロに促されて1310号室に入った。造りは1206号室と全く同じ。しかし置かれている家具が全く違う。リビングには1206号室とは違い、3人掛けと1人掛け、2つのソファがあった。
俺はその内の1人掛けのソファに座った。
「なぁ、家具って自分で買うもんなのか?」
タロはなぜか俺から見えないように隠して持っていた買い物袋を、たぶんタロの私室なのだろう部屋に投げ入れながら答える。
何が入ってたんだろう。……エロ本とか? そんなもん寮のコンビニに売ってる訳ねーか。
「うん。元からあるのが不満なら買って変えてもいいんだよ。基本的には3年間同じ部屋だから内装とかも変えていいし。ただ、退寮するときに自腹で元に戻すのが条件だけど」
「じゃあ俺の部屋のリビングにあるのは空牙が買ったやつなのかな?」
3人掛けのソファに狼が座った。
「あれが元からあるやつ。ねぇ、鈴音、こっち来て? 一緒に座ろ」
可愛いワンコのおねだりを無視する理由はないので、タロの隣に移動しようと立ち上がった。
俺がタロのそばまで行くとタロは両手を伸ばして軽々と俺を持ち上げて、膝の上に横向きに座らせる。俺がだっこされてる状態だけど、いつも俺に触れていたいらしい甘えたワンコの好きにさせる。
「あ、そうだ。俺こんな話しに来たんじゃねーんだよ。なぁカズの連絡先教えてくれよ。つーか携帯貸して」
タロは俺の背中を支えている右腕を少しずらして、制服のスラックスのポケットから携帯を取り出し、それを左手に持ち替えた。
そして、少し操作をして俺に手渡してくれた。
- 65 -
[*前] | [次#]
[戻る]