ベロチュー
SIDE:空牙
1−Aの教室に戻ってきた鈴音と野田先輩。鈴音は空腹で今にも倒れそうだ。顔に生気が無い。
「おまたへ〜」
「おぉー帰ってきた。ほな帰ろかぁ」
「何の用だったのさ?」
「ん〜、会長とちょっとね、知り合いだったっつーか。んでまぁ、世間話みたいな? な、タロ?」
「うん」
もの凄く不機嫌そうな顔。殺気立った雰囲気。今にも爆発しそうな怒りを必死で押さえているかのような様子の先輩。
「そそそっか〜! 野田先輩がそう言うなら、そうですよねっ」
「どうでもいいから早く帰ろうぜ? 俺もさすがに腹減った」
「待たせて悪かったな、みんな。タロも付き合わせちまって」
「そんなのあのクソ会長が悪いんだよ。もう殺しちゃおっか? ね、いいでしょ?」
「だからあいつに手ぇ出すなってば。ダメだぞ?」
「鈴音が何と言おうと、害があると判断したら……すぐにやるからね」
なんの話だったんだか。野田先輩、マジで会長を殺しそうな勢いだぜ。
よっぽどのことが……、まさか会長も鈴音を……? いや。考えすぎ、か。
SIDE:鈴音
やっとこさ寮の食堂まで帰ってきた俺達。もうお決まりとなった特別フロア下の席に座り、オーダーを済ませた。
「きたぁ〜! 待ってましたぁ! 俺のカスタードシュークリームっ!」
ウエイターが運んできてくれた直径10センチほどのシュークリームを頬ばる。頼んだ個数は5個。
なんか空牙に呆れた顔をされたけど気にしない。食べたいから食べる。俺は超がつく幸せ者!
「またデザートからかよ……」
「食前食後が最高の食べ方であります!」
「なんだよ、その口調はよ」
「よぉそれで太らんもんやなぁ」
「ほんとにそうだね。そんなことしたら僕ならすぐに太っちゃうさ」
「うまぁー! カスタードうま! 生クリームとのハーモニーがたまりませんなぁ〜」
「話聞いてないさー」
こんなうまいシュークリームは初めてだっ! メシ食う度に思うけど、この学園に入って良かったなぁ。仕事とか知らねぇよ、もう。ずっとここにいたい。
「鈴音っ、ホッペにクリームついてるよ?」
そう言って俺の頬に付いたクリームを舐め取るタロ。一郎と空牙がガタガタと忙しなく立ち上がった。
「なっ!」
「なにを……っ」
「タロ〜! 俺のクリームを奪りやがったな〜。返せ!」
「怒るのそこかよ!!」
俺に怒られて少しシュンとしたタロだったが、すぐに名案が閃いたとでもいうような顔をしてから、クリームの乗った舌を出した。
「ん、なええ(舐めて)?」
「よーし。まだ飲み込んでなかったんだな、偉いぞ」
俺のクリーム〜。ちょっとタロの舌の熱で溶けてんじゃん! 早く取らないと。
俺はタロの頬に両手を添えて、クリームの乗った舌を舐めようと顔を近づけ、口を開いた。
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