伝説のチーム
SIDE:圭吾
2人が出て行ったあとの生徒会室に残された俺達は皆、顔を引きつらせていた。
「『はぁーい』って……アレが本当に野田狼か?」
「リンにだけは甘いと聞いたことはあったが、実際目の当たりにすると……自分の目や耳を疑いたくなるな」
「気持ち悪いったらありゃしなーいっ」
「お前にだけは言われたくないだろうな」
「確かに」
「うるさいのっ」
本来は口の悪い幸介が、学園内でだけはこのブリッコの仮面を被る。本性を知る者にとってみれば、野田も幸介も同等に気持ちが悪い。
「でさぁ、どうすんだ? OVERFLOWのこと。あの通り総長が帰ってきたんじゃ、うちも危なくねぇか?」
「大丈夫だろう。野田はともかく、リンはうちとやり合う気はないようだったしな。逆にリンがいた方がストッパーになるし、安全だと分かった」
「この友好的な流れのまま、今の内に相互不可侵条約でも結んじゃおーよ?」
「それいいな! 俺、OVERFLOWを相手にするなんざ、ぜってぇ嫌だし。ケガですまねぇよ。下手すりゃ壊滅だ」
「…………」
……OVERFLOWか。
総長を含めてもたった18人の少数チーム。野田狼を始めとする1人ひとりが、喧嘩の強さだけならチームの総長を張れるような化け物揃い。
それらを束ねる総長のリンは恐ろしいほど強く、そして恐ろしいほど美しい。過去に傷一つ負ったこともないと聞く。
OVERFLOWに害を及ぼす、クスリをやる、一般人に危害を加えるなど問題のあるチームや族を次々と潰していたが、18人揃ってそれを行うことはなかった。
総長と共に多くて10人、少なくて2人で易々と潰していく……。
現在もチーム自体は存在するが、総長であるリンが突然姿を消してからは、1つも潰されたチームはない。事実上、OVERFLOWはなくなったとも言えるが……そんな状態でも、gadgetとOVERFLOWは最強だと並び称されている。
総勢104人いるウチと、たった18人のチームがだ。実質、OVERFLOWが最強、その総長のリンは最早伝説の人物になっている。
そのリンが、再び戻ってきた。
リンはなにがしたい? チームを潰していたのはなぜだ?
なにが目的で潰す? 暇つぶしか? それとも人助け? ならなぜこの地域でだけ?
行方を眩ました半年間で他の地域の族潰しをしていたとでも言うのか?
……分からない。
リンという人物のことが、分からない。
栗原鈴音、か……。
あの黒髪と眼鏡、理事長の指示だと言っていたが。……まぁ、頷ける。
リンと何度か接したことがあるが、あの外見ではこの学園の過ごすでのは危険すぎる。喧嘩は強いが……万が一ということもあるしな。
しかし気になる。
……なぜこんなにも気にする?
リン。栗原鈴音。
どうしてもお前のことが知りたい。
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